「2年前と全然違う」J2クラブ内定の帝京10番が、2人の先輩に衝撃。自分は「まだ高校生レベル」。意識改革で真っ向勝負を挑めるように

2025年09月16日 安藤隆人

左サイドハーフとして不動の存在に

帝京の10番を背負う久保。「プレミア昇格と、選手権で10個目の星を勝ち取りたい」と意気込む。写真:安藤隆人

 9月1日、J2のFC今治が、帝京高3年のMF久保恵音が2026シーズンより加入することを発表した。

「最初の進路相談で、第一志望は大学ではなく、高卒プロと書きました。やっぱりあの2人を見ていたからこそ、自分も迷わず書けました」

 こう口にしていた久保が言う2人とは、帝京の先輩であり、今治でも先輩となるFW横山夢樹とDF梅木怜。彼らが高3の時に1年生で出番を得ていた久保は、高卒で当時J3だった今治への加入を決める過程を目の当たりにした。

 さらにプロに入って1年目から躍動し、チームをJ2に押し上げ、今年も横山はFWとトップ下で、梅木は右ウイングバックで不動の存在となり、今秋にチリで開催されるU-20W杯のメンバーにも選出されるなど、着実にステップアップを遂げる姿も見てきた。

「夢樹さんは『開幕戦から出る気持ちで行く』と言っていて、実際に開幕戦でベンチ入りをしたのは凄いなと思いましたし、その後もゴールやアシストを決めて、スタメンを掴んでいった。怜さんも同じような気持ちで『練習の質も高いし、大学に行くのもいいけど、プロのチャンスがあるなら行く』と覚悟を決めていた。かなり刺激を受けましたし、それくらいの覚悟でいかないとダメだなと思いました」
 
 FCラヴィーダから「昌平高(※ラヴィーダは昌平高の下部組織にあたる)に進むことも考えたのですが、今までとは違う環境でチャレンジしたいという思いが強かった」と帝京にやってきた久保は、同じポジションの横山のプレーと、醸し出す雰囲気に大きな衝撃を受けた。

「仕掛けの部分の質もそうだし、ボールを預けたら必ずチャンスが生まれるという雰囲気が凄まじかった」

 積極的に質問したことで、1年間だけだったが、かなりコミュニケーションを取ることができた。梅木もDF目線でアドバイスをくれるなど、関係が深かったからこそ、久保にとって2人は明確な目標となった。

 昨年は思うように出番を掴めない時期が続いたが、2人の活躍とインターハイで昌平が優勝したことに刺激を受け、得意の切れ味鋭いドリブル、裏に抜け出すスピード、右足のキックの強度と精度を徹底して磨いた。

 そして今年、セカンドチームの10番からトップチームの10番を託され、左サイドハーフとして不動の存在となった。鋭いカットインからのシュートとパス、強烈な縦突破からの正確なクロスと、思い切りの良いシュートを繰り出すドリブラーに成長した久保のもとには、今治とJ3のクラブから練習参加のオファーが届いた。

「高卒プロを本気で狙うきっかけとなった2人が進んだクラブの練習に呼ばれて、不思議な縁を感じました。実際に今治の練習に参加してみて、前を向いてからの仕掛けの部分は手応えを感じた一方で、ボールを受けるまでの準備だったり、奪われた後の切り替えのスピードだったり、守備の強度は一つひとつの質がまだまだ高校生レベルなんだと感じました」

 手応えも課題もあった一方で、目標である2人からはアドバイスをもらったり、ご飯に連れて行ってもらったりとお世話になると同時に、彼らの成長速度の凄まじさも目の当たりにした。

「2人とも、あらゆるスピードが2年前と全然違いました。帝京の時も毎日がスーパープレーみたいな感じだったんですけど、向こうに行ってそのまんまというか、質がかなり上がった状態でのそのままだった。正直、たった2年で、もともと凄い人がもっと凄くなるんだと感じると共に、差がもっと開いたという印象でした。かなりの衝撃でした」
 

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