“三笘の衝撃”を思い出すような“伊藤の衝撃”。ボールを持てば何かを起こす男への期待感は半端ない

2025年09月08日 本田健介(サッカーダイジェスト)

ルヴァンカップでは川崎を準決勝へ導く

チームをルヴァンカップの準決勝へ導いた伊藤。欠かせない存在となっている。(C)SOCCER DIGEST

[ルヴァンカップ準々決勝・第2戦]川崎 3EX2 浦和(合計スコア4-3)/9月7日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

 この男はなんなのか...。

 そう感じた人も多いだろう。延長戦までもつれこんだ浦和とのルヴァンカップ準々決勝・第2戦、またも川崎を救ったのが、167センチのアタッカー、伊藤達哉であった。これで公式戦5戦で6発という決定力とともに、突破力も半端ない。まさに身体がキレまくっているのである。

 26節のアウェー新潟戦ではCKの流れから1-1に持ち込む同点弾を奪うと、27節の名古屋戦では先制点とともに敵陣ペナルティエリアで寄せてくる相手を舞うようにかわして決勝弾(〇4-3)を奪い、続く28節の町田戦ではカウンターからコースを狙った見事なミドルで先制点をマーク。

 そして浦和とのルヴァンカップ準々決勝・第1戦では、敵地で試合終了間際に1-1に持ち込む豪快な一発を決めてみせ、今回の第2戦では、またも得意な左サイドから切れ込んで一時2-1と勝ち越す度肝を抜く一発を突きさす。そして2-2に追いつかれて迎えた延長戦に決勝弾につながるPKをもたらしたのもこの17番であった。

 素晴らしいシュート技術を武器に大事な場面でネットを揺らし続け、相手を抜きにかかれば高い確率で突破する。相手DFとしては間合いを詰めればドリブルで抜かれる恐怖があり、突破をケアして距離をあけると精度の高いミドルが飛んでくる。まさにDF泣かせの存在になっているのだ。
 無理に比較をすると、またお叱りを受けそうだが、その"衝撃"は、かつての三笘薫を見た時と似ていると感じる面もある。奇しくもふたりは同じ1997年生まれ。交流もあり、川崎加入時などに会話もかわした仲で、伊藤は川崎では右サイドに入ることも多いが、左サイドからのドリブルを得意としているのも同じである。

 167センチの姿がひと回り大きく見えるようなオーラさえ放っている今の伊藤だが、そんな会話をしたリーグの町田戦後にはこんなエピソードも語っていた。

「それ、ケンゴ(中村憲剛)さんにもさっき(試合後)言ってもらったんですよ。『今、達哉、オーラ纏っているぞ。最近違うぞ』って。自分では分からないのですが、何かあるのかもしれないですね。ただ今日だけっていうよりは最近の積み重ねってことだと思うんです。でも自分では分からないので『マジすか』みたいな受け答えでした(笑)」

 まさに今の伊藤はお金を払ってでも見たい選手である。柏のアカデミーを経て、ドイツやベルギーで研鑽を積み、今季川崎でJリーグ初挑戦。いわゆる"逆輸入選手"とも言われる28歳だが、第1次森保ジャパン発足時(2018年)のメンバーであり、2019年のコパ・アメリカなどにも参戦。日本代表からは長く離れてしまったが、もう一度、その舞台でも見たいと個人的に強く感じる。
 
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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