決勝弾はエジルキック? 伊藤翔はうなずく。ここぞの場面で真骨頂を発揮「あれはマジでイメージ通り」【横浜FC】

2025年08月19日 サッカーダイジェストWeb編集部

「ワールドカップの決勝でディ・マリアもやっていた」

神戸戦で横浜FCを9試合ぶりの勝利に導いた伊藤。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

「あれはエジルキック?」と聞けば、横浜FCの伊藤翔はうなずいた。神戸戦の決勝弾のことだ。

 8月16日に行なわれたJ1第26節で、横浜FCは神戸と敵地で対戦し、1-0で勝利。スコアレスで迎えた90+4分、左サイドを抜け出した櫻川ソロモンのクロスに伊藤が右足で合わせる。横っ飛びでセーブしようとしたGK前川黛也をかわすように、あえてボールを弾ませたシュートでネットを揺らした。

「あれはマジでイメージ通りにいけた」と振り返る伊藤だが、最初から狙っていたわけでもなかった。

「もしキーパーが間に合いそうになかったら、そのまま真っすぐに打てばよかった」

 だが、前川は素早く反応してきた。伊藤本人も「そっち側に打って、外すパターンってけっこうあった」こともあり、即座に切り替える。「(GKが)倒れてきたところに、チョンと浮かせたいなと思った」。
 
 もっとも、ボールが少しだけ前にあったため、スライディングするような格好でフィニッシュを試みた。

「スライディングをするんだったら、たぶんチョンと浮かせるのは難しい。まっすぐ蹴ってもキーパーが間に合っちゃう。となれば"越える"しかない。ボールもちょうどバウンドが良いタイミングだったから、ばいーんって弾けた」

 状況的に伊藤はフリーだった。「ああいう時って、けっこう難しい。いろいろ考えられちゃう。邪念があるから(笑)」とジョークを飛ばすが、ある意味で準備はできていた。

「あそこでそういう発想になったのが、やっぱりエジルがやっていたのもそうだし、(カタール・)ワールドカップの決勝でディ・マリアもやっていたんですよね。ああいうシーンを何回も見ているんで、イメージとしてはあった。練習でも、遊びじゃないけど、ボール回しの時もそうで、ボールを叩きつけるみたいな感覚は自分の中にあった」

 ゴール前で瞬時に判断し、実践してみせる。それが伊藤の真骨頂でもある。「もちろん、準備と言えば準備なんだけど、そんなことは当たり前。議論にもならない」と熟練アタッカーはきっぱり。常に来たるべき時に備えている。たとえメンバーを外れたとしても、無心に、真摯にサッカーと向き合い、己を高める。チーム最年長の37歳は健在だ。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

【動画】あまりに劇的!伊藤翔が94分に魂の決勝ゴール

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