【社長・細貝萌の生き様】ベイシアグループ参画でザスパの経営基盤がより強固に「多くの前向きな変化があると思います」

2025年08月09日 元川悦子

「地道な活動が何よりも重要なんです」

クラブのトップとして着実な歩みを見せる細貝社長。写真:元川悦子

 4月末の正式社長就任から3か月余り。細貝萌社長が率いるザスパ群馬は、経営面でいくつかの変化があった。そのうち最も大きかったのが、5月29日のベイシアグループ参画だ。

 同クラブは第三者割当増資を実施。ベイシアとカインズが議決権保有割合の25.2%をそれぞれ取得し、ベイシアグループとして合計50.4%の議決権を保有するに至った。これにより、ザスパはベイシアグループの傘下に入り、経営基盤がより強固になったのだ。

「5月29日にベイシア・カインズの土屋裕雅会長、ザスパの赤堀洋会長と僕の3人で記者会見をして、正式なグループの一員になったことを発表しました。

 これにより、経営基盤を安定させ、持続させていくことが僕らクラブにとっての最重要テーマになってきます。その前段階からベイシアやカインズからスタッフも来てくれ、フロントスタッフの人数も増えてきています。人数が多ければ多いほど営業面を強化できますし、よりきめ細かいサービスができる。グループの力を借りながら、社内のDXも着手したところですし、ここから多くの前向きな変化があると思います。

『ベイシアグループに入ったから、いきなり数億円の使えるお金ができたんじゃないか』とよく勘違いされるんですけど、それは誤りで、予算自体は基本的に変わりません。ただ、ベイシアグループという日本有数の企業体の存在によって信頼度は高まりますし、ベイシアグループのネットワークの力も借りやすくはなった。それは本当にありがたいことです」と細貝社長はしみじみと感謝を口にした。

 この2か月で両社とのコラボが大々的に展開されるようになったわけではないが、第一弾としてスタートしているのが、「ザスパンダバナナ(279円)」の販売。これはベイシアによるザスパ応援商品で、クラブマスコットである「ザスパンダ」のラベルが貼られているのが特徴だ。6月中旬からベイシア全店舗(ベイシアマート、オトナリマートなど一部店舗を除く)で取り扱いが始まり、売り上げの一部がクラブの強化資金に充てられるという。
 
 クラブの本拠地とその周辺の人々には良いアピールになるはずだ。

「ザスパンダというマスコットキャラクターもそうですし、ザスパ群馬というクラブのことを少しでも地域の人に知っていただけたら嬉しいですね。今後はカインズ内にもザスパのブースを設けてもらう予定ですし、カインズとベイシアの館内放送で選手の声が流れる機会も作ってもらっています。実は僕自身も登場しているんですけど(笑)、そういう地道な活動が何よりも重要なんです」と、新人社長は一歩一歩、前進していく覚悟だ。

"目の前のことをコツコツと積み重ねていくことが大事"という考え方は、試合日の細貝社長の行動を見ていてもよく分かる。

 中断前ラストとなった7月26日の鹿児島ユナイテッドFC戦当日も、19時試合開始の半日以上前に正田醤油スタジアムに到着。筆者やテレビ局の取材をこなし、16時前にはサポーターの先行入場ブースへ。この日の配布物である特性リュックを自ら確認し、お客さん一人ひとりに手渡す作業を、38度近い酷暑のなか、20~30分にわたって精力的に行なっていた。

 それが終わると、今度は飲食店やグッズ販売店のブースへ移動し、1店舗ごとに顔を出して「本日もよろしくお願いします」と挨拶を続ける。VIPが来場する時間帯も同じように笑顔で挨拶を繰り返し、試合直前からはGMとして現場の様子を厳しい目で見守るのだから、どれだけ神経を使う仕事か分からない。
 

次ページ目標とすべきクラブの1つが川崎フロンターレ

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事