イグアインと個人合意したユーベ。ナポリとは“値引き”が効く7月中の合意を目指す

2016年07月25日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

7月23日にはマドリード市内で秘密裏にメディカルチェックを受ける。

ユーベはイグアインと個人合意を締結。残すはナポリとの交渉のみだ。(C)Getty Images

 普段はめったに公の場で話さない人物が、3日連続でコメントを出すのは異例のことだ。しかもその彼、ナポリ会長のアウレリオ・デ・ラウレンティスは、話すとなったらありふれたことは言わない。話題の中心は2つのチーム、ナポリとユベントス。たった1人でシーズンの行方を左右できるほどゴールを量産するセリエA最強のストライカー、"エル・ピピータ"ことゴンサロ・イグアインをめぐる駆け引きがテーマだ。
 
 コパ・アメリカ・センテナリオ後のバカンス中に揺れに揺れていたピピータの心は、すでに固まった。昨シーズンはセリエA新記録の36ゴールを挙げた稀代の点取り屋は、ユーベで欧州の頂点を狙うという新しい挑戦を受け入れたのだ。
 
 7月23日にはマドリードで秘密裏にメディカルチェックを受け、ユーベと4年契約で合意。年俸は750万ユーロ(約9億円)がベースで、ナポリではクラブが一括管理していた肖像権料などを含めれば1000万ユーロ(約12億円)になる好待遇だ。
 
 しかしデ・ラウレンティス率いるナポリは、契約書に記載された違約金9470万ユーロ(約117億円)を用意しない限り、放出は認めないという立場を貫いている。とりわけ国内のライバル対しては、人的補填などによる値引きなどは一切応じない構えだ。ユーベはDFダニエレ・ルガーニ、MFロベルト・ペレイラ、MFステーファノ・ストゥラーロ、GKネトなどを差し出すプランを考慮したが、ナポリの姿勢は頑なだ。
 
 ただ、実はナポリとイグアインの間には、「選手本人が望めば、9000万ユーロ(約108億円)を2年分割で払えば移籍できる」という条項もある。その期限は毎年の7月31日。それまでにナポリと合意できれば、ユーベは470万ユーロ(約5億6400万円)の値引きでイグアインを獲得できるのだ。小さくない額である。
 
 ここにきてアーセナルもオリビエ・ジルーを交換要員とする魅力的なオファーを用意してきた。しかし、イグアインの心はすでにユーベ行きで固まっているし、ユーベは彼に「遠からず必ず違約金を用意する」と約束している。
 
 カルチョ・メルカートの歴史に残るビッグディールが、成立へと向かっている。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
 
※当コラムではディ・マルツィオ氏のオフィシャルサイトにも掲載されていない『サッカーダイジェストWEB』だけの独占記事をお届けします。
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、「移籍マーケットの専門記者」という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
 
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