【新潟】伊藤優汰がピッチ内で見せた激情とピッチ外で見せた笑み

2016年07月24日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「クロスが相手の足に当たって、上手く良いポイントに飛んでくれた」

65分に途中投入されると、その1分後にはR・シルバの同点ゴールをアシスト。「ミスは多かった」ものの、攻めても決め切れない雰囲気を一変させた。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

[J1・第2ステージ5節]大宮 1-2 新潟 7月23日/NACK
 
 時折ピンチを迎えるものの、前半は大宮のシュートを3本に抑えた。対して新潟は11本。積極的なプレスと、出入りを繰り返しながらパスを回し、要所でドリブルを組み込む攻撃で、押し込んでいた。
 
 しかし、「僕でさえ怒りたくなるような決定機の逃し方」(吉田達磨監督)があり、逆に相手にはクロスがそのままゴールへ吸い込まれたような、ラッキーな得点が生まれた。45分が終わった段階で0-1。
 
 これがサッカーの面白さ、とでもいうような展開は後半も続いた。よりボールを支配して、主導権は完全に握っている。なのに、ゴールが遠い。それは少しだけ不思議な光景でもあった。
 
 その状況を見かねたのか、「多くのチャンスを作ることはできている。後半にも必ずチャンスは来る。少しだけ落ち着いてゴールを決めるだけだ」とハーフタイムコメントを出していた指揮官は、早々に手札を切った。
 
 まずは54分に4-1-4-1の左サイドハーフに入っていた山崎亮平に代えて、リオ五輪のバックアップメンバーに選出された鈴木武蔵を投入。矢継ぎ早に、65分にはトップで奮戦していた成岡翔に代えて、ドリブラーの伊藤優汰を入れた。
 
 この采配がズバリ。66分、大宮のCB河本裕之が縦に入れたボールを小林裕紀がカット。腰を捻るような動作から、左足で右サイドの伊藤へとパスを通した。選択肢はドリブル突破の一択……では、なかった。
 
「そのままクロスを上げようと最初は考えた。でも、それで良いイメージが湧かなかったから、トラップして仕掛けようと。(左足で一回跨いで)縦にちょっと出してクロスを上げたら相手の足に当たって、上手く良いポイントに飛んでくれた」
 
 利き足とは逆の右足から放たれたボールは、河本が伸ばした右足に当たって、まるでループシュートのようにGK加藤順大の頭をふわりと越えた。そこに走り込んでいたのが、ラファエル・シルバだ。背番号10のヘディングによって、同点ゴールはもたらされた。
 
 その2分後には、野津田が代名詞であるキャノン砲を得意の左足ではなく、右足でゴールネットに突き刺している。これで2-1。残り時間25分の段階で、この試合の最終スコアは確定した。

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