【リオ五輪】長友2世というより内田2世? TV観戦ではおそらく分からない室屋の妙技

2016年07月18日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

印象的だったクリスティアーノとのマッチアップ。

柏のクリスティアーノを完璧に封じ込めた室屋。優れたフィジカルはもちろん、ポジショニングが光った。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 7月17日に味の素スタジアムで行なわれたFC東京と柏の一戦は、後者が1-0で勝利という結果に終わった。ホームチームにとっては確かに悲劇的な敗戦だったが、"希望の光"がなかったわけではない。

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 特筆すべきは、室屋のパフォーマンスだ。3試合続けて右SBでスタメン出場したこのリオ五輪代表は対峙した柏のクリスティアーノを完璧に抑え込むと、徳永が河野と交代した67分以降は左SBとして躍動。ルーキーとは思えない大胆不敵な活躍で、好印象を残した。
 
 フィジカルの強さはもちろん、ポジショニングが素晴らしかった。常に周囲を確認し、近くにいるCBと適度な距離感を保ちながら守備網を張る。そして、まるで詰将棋のように味方を動かしながら敵を追い込み、絶妙なタイミングでボールを狩るのだ。

 なかでも冷静だったのが22分のシーン。左サイドでクリスティアーノにボールを持たれた局面で、室屋はまるで焦らなかった。クリスティアーノが仕掛けようとしても、相手の誘いに乗らずに腰を落としてじっと一定の距離を保つ。そうしてクリスティアーノの動きを止めると、味方のフォロー(この場合は橋本)を待って最終的にマイボールにした。
 
 左右のSBをこなすユーティリティ性、明治大出身、FC東京在籍と共通点があることから"長友2世"と呼ばれる室屋だが、プレースタイルはどちらかと言うと内田に似ているように見える。
 
 ちなみに、内田は昨年末のインタビューで次のように答えていた。
 
「僕は守る時、どちらかと言えばフォローへの意識のほうが強いです。サポートして、危ないところを摘むイメージ。身体は大きくないので、そういう守り方になります。
 
たぶんサッカーは頭でやらないと、波は小さくならないと思います。身体能力や勢いだけでは、どうしてもボロが出てきますからね。
 
目の前の相手に良い形でボールが入るのが一番面倒なので、そうさせないためのポジション取りを頭で考えながらやっています」
 
 内田の守り方とまったく同じとは思わないが、「そうさせないためのポジション取り」は室屋のプレースタイルとかぶる。試合後、その室屋もクリスティアーノの対応については次のように語っていた。
 
「監督からもクリスティアーノのところを止めろということは言われていたので、意識してプレーしました。前方にいた(右サイドハーフの橋本)拳人くんと上手く守れていた」
 
 頭脳的な守り方をしていたのは、なにも今回の柏戦だけではない。J1デビューを果たした甲府戦でも、続く福岡戦でも守備の安定感は光っていた。
 
 室屋の巧さは、おそらくテレビ観戦では分からない。底知れぬポテンシャルを秘めたSBの職人技とも言えるディフェンスは一見の価値ありだ。
 
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