満足している選手は、1人もいない。12試合ぶり勝利の横浜FM、主将・喜田拓也が逆襲を誓う「絶対に這い上がる」

2025年05月26日 金子 徹(サッカーダイジェスト編集部)

マリノスがどういうクラブなのかを示したい

主将としてチームを牽引した喜田。攻守にハードワークし続けた。(C)SOCCER DIGEST

[J1第18節]横浜FM 3-1 鹿島/5月25日/日産スタジアム

 12試合ぶりの白星を掴んだ。横浜F・マリノスが鹿島アントラーズを3-1で破った一戦は、チーム全員の勝利への執念が感じられた。

 クラブワーストの7連敗で11戦未勝利。最下位に沈む横浜FMが、ホーム4連戦の4試合目で迎えた相手は、ともにJ2に降格をしたことがないオリジナル10の強豪だった。

 もちろん選手たちはこうした状況に関係なく、毎試合、勝利のために全力を尽くしているのは重々承知している。ただ、鹿島戦では球際や競り合いで"絶対に負けない"、相手のシュートに複数人が身体を投げ出して"絶対にゴールを割らせない"といった気迫が伝わってくる場面が多かった印象だ。

 試合は開始4分に、横浜FMが永戸勝也のゴールで先制すると、13分と27分にヤン・マテウスがネットを揺らす。36分に1点を失い、その後も押し込まれる場面が少なくなかったが、追加点を許さなかった。

 ようやく掴んだ勝利だったからだろう。タイムアップの笛が鳴った時、ダッシュでボールを追いかけていたトリコロールの主将・喜田拓也は、まるでヘッドスライディングをするかのように、ピッチに倒れ込んだ。

「今日だけに限らず、もがいて、もがいて。それでも苦しいなか、みんなで歯を食いしばってやってきた。(全力を)出し切ったということも、もちろんそうですけど、それ以上に重みや責任が間違いなくありました。選手、スタッフ、クラブに関わるすべての人、そしてファン・サポーターも、一緒に苦しみながら戦い続けてくれたので、彼ら、彼女らに捧げたい1勝です」
【動画】永戸&Y・マテウスのゴールで勝利
 横浜FMは前節のヴィッセル神戸戦から、チームの代名詞であるアタッキングフットボールとポゼッションを封印。ロングボールでシンプルに背後を狙うサッカーに切り替えた。鹿島戦はボール保持率が34パーセントで、本来のスタイルとはほど遠かった。それでも喜田は、チームとしてベクトルを合わせることが大事だと強調する。

「よくサッカーのやり方が変わると、どうこう言われたりしますけど、正直、絶対に勝てるサッカーは存在しない。どんなやり方でも、意思とか矢印が揃っていなければ勝てないし、それが一緒であれば勝つことは可能なので、一番大事なのはそこだと思う。

 もちろんサッカーの内容やプロセスに対して、いろんな見方や意見があるのは当然です。ただ、一番は勝つため、そしてこのクラブのためっていうのが根底にある。今は勝つために必要なことを、クラブとして考えながら進んでいる段階」

 試合前に、改めてチームとして大切な姿勢を共有したことも、勝利に繋がったようだ。

「戦っている、苦しんでいるのは自分たちだけじゃない。ファン・サポーターは直接的に支えてくれたり、後押しをしてくれているけど、そのうえで目に見えないところにもクラブを支えてくれている人がいる。そうした人たちのためにも、僕たちが変えないといけない。

 対戦相手もタイミングもそうですけど、(今節は)圧倒的な力で首位に立っている素晴らしいチームだったので、そこも試されているんだろうなと。このチームが本物なのかを。だから、ここをきっかけにしたい。そういうものって選手やチームのメンタリティに間違いなく影響してくるし、しっかり共有して試合に入ったから、選手たちの気持ちが出ていたと思う」

 では、その気持ちはこれまでなかったのか。そんなことはない。喜田は「決して今まで気持ちがなかったとか、頑張っていなかったなんて、まったく思わない。僕の拙い経験ですけど、練習への姿勢や試合に臨む熱量も悪かったとは思っていない」と言葉に力を込め、次のように続ける。

「これをきっかけにしないといけないし、勝てた理由が必ずある。次にまた勝つために、1パーセントでも確率が上がることがあるなら、僕はやるべきだと思う。絶対的に勝利の数が足りないですし、満足している選手は、1人もいない。ここから絶対に這い上がる。周りに何を言われても、笑いものにされてもいい。絶対に這い上がって、マリノスがどういうクラブなのかを示したい」

 横浜FMの厳しい状況に変わりはないが、鹿島戦の勝利は今後への自信に繋がるはず。ここからの逆襲に期待したい。

取材・文●金子徹(サッカーダイジェスト編集部)

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