W杯GS敗退、日本に惨敗で解任→ドイツで名声を失った“元6冠指揮官”がスペインで再評価。「バカにしていた者は謝罪をしなければ」【現地発コラム】

2025年04月21日 中野吉之伴

懐疑的な視線を送る識者が多かった

3冠が現実味を帯びバルサを操舵するフリック監督。(C)Getty Images

 スペインの雄バルセロナはチャンピオンズリーグ(CL)の準々決勝でドイツのドルトムントと対戦。ホームでのファーストレグでは4-0と快勝したなか、アウェーのセカンドレグでは大苦戦したものの、2戦合計5-3で、6年ぶりとなる準決勝進出を果たした。

 バルセロナのハンジ・フリック監督はバイエルン時代にCL、ブンデスリーガ、ドイツカップ、UEFAスーパーカップ、ドイツスーパーカップ、クラブ・ワールドカップと6冠を達成。万雷の拍手とともにドイツ代表監督へと就任したが、母国における名声を一気に失ってしまった。

 18年ロシアW杯でグループリーグ敗退し、その後も低迷していたドイツ代表を軽やかに浮上させることを大いに期待されていた。だが現実はこれ以上ないほど厳しかった。

 22年カタールW杯で、またしてもグループリーグ敗退。フリックは「チーム一丸で戦うことが必要だ。一人ではできないこともみんなの力を合せたら達成することができる」といった声を必死にかけるが、届かない。当時のドイツ代表は互いの信頼感も、チームとしての一体感も生まれないまま大会に臨んでしまった。

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 フリックにとって苦しかったのは、当時の様子を移したドキュメント映像がW杯後に公開され、思うようにいかない苦悩を抱える様子が如実に知れ渡ってしまったことだろう。ドイツサッカー協会がなぜ公開にGOサインを出したのか。今も議論は絶えないテーマだ。

 大会後にフリック体制続投とはなったが、形骸化したチーム状態では改善の可能性もない。日本との再戦でいいところが全くなく1-4で大敗した後、代表監督の座を退くことになったのは周知の事実だ。

 フリックの監督としての資質にドイツで大きな✖印がつけられていただけに、バルセロナ監督就任について懐疑的な視線を送る識者が多かった。また大失敗するのではないか、と。

だが、フリックは本来優れた才能を持つ指導者だ。でなければ、バイエルン時代にタイトルを総なめすることはできない。フリックを知る指導者や選手はみな、その人心掌握術のすばらしさを口にする。

 活動期間の少ない代表チームでは難しかったが、日常を共にするクラブ監督としてはフリックの良さを存分に出すことができる。選手を信頼し、明確なゲームプランとともにチームの基盤を築いていく。困難な時期を乗り越え、多くの選手が解放されて、躍動感のあるプレーを見せているのが何よりの証拠だ。
 

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