課題山積みでもOK。U-17アジア杯でW杯出場を懸けて戦った豪州戦の経験は財産。“廣山ジャパン”に必要だった真剣勝負の場【現地発】

2025年04月13日 松尾祐希

「吹っ切れて戦う機会がまだ少ない世代」

他力ながらW杯の出場権を獲得したU-17日本代表。写真:佐藤博之

 サウジアラビアで開催されているU-17アジアカップ(今秋にカタールで行なわれるU-17ワールドカップの最終予選を兼ねる)。W杯の参加国が24から48に拡大したため、前回まではアジア杯で準決勝に勝ち上がった4か国にW杯の出場権が与えられていたが、今大会からはグループステージ(GS)でそれぞれ2位以内に入り、決勝トーナメントに進んだ8チームに本大会行きの権利が与えられる。

 GSを2勝した時点で決勝トーナメント進出がほぼ確実になるため、最終予選突破のハードルは自然と下がる。誤解を恐れずに言えば、もっと楽に"世界への挑戦権"を獲得できると見込んでいた。

 しかし――。グループステージの蓋を開けてみれば、良かったのは初戦のUAE戦(4−1)だけで、残る2試合は大苦戦。2戦目のベトナム戦(1-1)は後半アディショナルタイムまで1―0でリードしながら、土壇場にPKで失点して追いつかれた。

 さらに、引き分け以上でW杯出場を自力で決められる3戦目のオーストラリア戦(2-3)は早々に先制しながら、後半に3失点。残り15分の時点で3位に転落したため、同時刻に行なわれていたUAE対ベトナムの一戦が引き分けに終わるか、日本が2点差を追いついて勝点1を積み上げるしかなかった。

 裏カードがドロー決着となったため、日本は絶体絶命の大ピンチから奇跡的に生還できた。だが、誰もがGS敗退を覚悟したのは間違いない。突破が決まった瞬間、メンバーは感情を爆発させ、副キャプテンのMF神田泰斗(大宮U-18/2年)を筆頭に多くの選手が涙を流していた。

「本当に怖かった」(神田)

「正直、行けないと思っていました。みんなが集まって、神に祈っていました」(DF藤田明日翔/川崎U-18/2年)

 彼らの言葉からも、ギリギリの戦いを強いられていた様子が分かる。
【画像】華やかなコスチュームでエール! 大会を彩る韓国女子サポを特集!
 昨年10月のアジア杯予選でキャプテンを務めたCB横井佑弥(G大阪ユース)が大会直前にコンディション不良で離脱し、最終ラインは経験値が浅いメンバー構成になったエクスキューズはあるが、今大会の内容は反省すべき点が多い。

 CBの藤井翔大(横浜ユース)、篠崎健人(市立船橋)は元々SBを本職にしているとはいえ、競り合いや守備の強度で不安を露呈。攻撃陣も自分たちのペースでボールを動かせていたが、守備を固められた途端に攻めあぐねた。W杯までに課題と向き合う必要があり、今のままでは本大会での躍進は難しいだろう。

 しかし、今回の経験は無駄ではない。U-17世代は今まで、日の丸を背負って公式戦を戦う場が少なかった。極限状態でプレーするのも未知の世界。廣山望監督は言う。

「吹っ切れて戦う機会がまだ少ない世代。本当に死ぬ気でやるとか、何かを求めていくとか、(出場権を)失わないために守るとか、そういう本気の経験がない」

 GSでは1点の重みを味わった。スムーズに突破するよりは、修羅場をくぐり抜けたほうが強く逞しくなる。苦戦を強いられ、批判もあるかもしれないが、選手たちの成長を考えれば必要だった。

「オーストラリア戦で選手たちは本質的な大事なところに気づいたのかなと思う」とは指揮官は言う。13日に行なわれるサウジアラビアとの準々決勝で選手たちはどのような変化を見せるのか。大人の階段を登る彼らの物語はまだ始まったばかりだ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

【記事】「アジア全土を驚かせる」FIFAランク123位のユース年代が韓国撃破→3連勝で首位通過に海外驚嘆!「最大のサプライズだ」「日本よりも…」【U-17アジア杯】 

【画像】9頭身の超絶ボディ! 韓国チア界が誇る"女神"アン・ジヒョンの魅惑ショットを一挙チェック!

【記事】「イランよ、一体どうした?」「なんてことだ」アジア2位の"弟分"が104位に完敗!まさかの最下位で敗退決定に海外驚き!「1分け2敗とは…」【U-17アジア杯】
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事