地獄からの生還――ギリギリの戦いで掴み取ったU-17W杯の出場権。課題山積みの廣山ジャパンで唯一の光明はFW谷大地の復活【現地発】

2025年04月11日 松尾祐希

78分に途中出場→86分に得点

チーム2点目を挙げた谷。期待に応えてみせた。写真:佐藤博之

[U-17アジア杯・GS第3節]日本 2-3 オーストラリア/4月10日/Okaz Stadium

 思わず安堵のため息が漏れたことだろう。

 サウジアラビアで行なわれているU-17アジアカップ。今秋にカタールで開催されるU-17ワールドカップのアジア最終予選を兼ねており、今大会の上位8か国に出場権が与えられる。

 4チームで競うグループステージで上位2か国に入ればW杯出場が決まるなかで、廣山望監督が率いる若き日本代表は、第2節終了時点で1勝1分けのグループ首位。第3節のオーストラリア戦をドロー以上で終えれば自力で2位以内が確定する。

 一方、敗れれば話は別だ。同時刻キックオフのUAEとベトナムの結果次第。どちらかが勝っても日本は3位に転落。引き分けの場合は日本、UAE、オーストラリアが勝点4で並ぶため、当該チーム間の勝敗や得失点差などで順位が決まる。

 オーストラリア戦で日本は7分にCB藤田明日翔(川崎U-18/2年)が先制弾を挙げたが、以降は身体能力とサイズに恵まれた相手に苦戦。51分に同点に追いつかれ、71分にミスから失点。敗退の危機に追い込まれると、74分にも3点目を奪われた。

 この時点で裏カードはベトナムが1-0でリード。このままではワールドカップ行きを逃すなかで、終盤にFW谷大地(鳥栖U-18/2年)が得点し1点差に迫る。だが、その後はネットを揺らせず、2-3で敗れた。

 一方のUAE対ベトナムは、87分にUAEが追いつき、1-1のドローで決着。勝点で並ぶ3チームのなか、得失点差で上回る日本が首位通過を果たした。2位はUAEだ。
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 敗れたオーストラリア戦を振り返れば、決して褒められる内容ではない。試合中にシステムを変えてきた相手への対応、前から仕掛けてくるハイプレスの回避や守備の強度など、反省すべき点はいくつもある。それでも、明るい材料もあった。谷の復活だ。

 昨年のU-17アジア杯予選ではチームトップの7得点をマークしており、今大会も184センチのサイズを活かしたポストワークと得点能力に期待がかけられていた。

 しかし、サウジアラビアに入ってからコンディション不良で一時離脱してしまう。開幕直前に復帰したものの、本人は初戦後に不安を吐露。「まだ100パーセントじゃない」と話し、廣山監督もGS第2節まで起用しなかった。

 回復を待った甲斐もあり、オーストラリア戦の前日練習では状態の良さをアピール。指揮官からも「コンディションを落としていたので、オーストラリア戦も90分の起用は難しいけど、点を取りそうな匂いを出していた。絶対に使いたい」と太鼓判を押されると、78分に途中出場する。

 そして86分、MF今井宏亮(東京Vユース/2年)の右クロスに反応。「スペースも狭くてワンタッチじゃないと厳しい。ギリギリで足に当たってくれて、死ぬ気で足を伸ばした」とは谷の言葉。最後は気持ちで押し込んだ。

「2戦目まで出られず、メンタル的にきつい状況だった」と本人が振り返った通り、モチベーションを維持するのは難しかった。それでも準備を続け、結果を残してみせた。

 父のキム・ジョンミンは韓国人の有名歌手で、日本人の母はかつて「ハロー!プロジェクト」のメンバーだった谷ルミコ(旧芸名:三佳千夏)。そんな両親を持つ谷は中学2年までFCソウルでプレーし、現在は鳥栖U-18に所属。異色のキャリアを歩んできたストライカーの復調は、大会3連覇を目ざす廣山ジャパンにとって心強い。

 ノックアウトステージの準々決勝ではホスト国サウジアラビアと相まみえる。背番号18は日本を勝利に導くために、貪欲にゴールを狙い続ける。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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