ミランに本田圭佑の居場所はあるのか? モンテッラ新監督の戦術的志向から読み解く

2016年06月30日 片野道郎

高い戦術的手腕の持ち主。気になる本田のポジションは?

攻撃的なポゼッションサッカーを志向するモンテッラ(右)。その新指揮官の下で本田(左)はポジションを確保できるか? (C) Getty Images

 6月28日にミラン新監督に決定したヴィンチェンツォ・モンテッラは、現役時代は主にサンプドリアとローマで得点感覚に優れたストライカーとして活躍。監督に転身後はカターニャ、フィオレンティーナ、サンプドリアで、イタリアの現実的スタイルとははっきり一線を画したポゼッション志向の攻撃サッカーを打ち出して、成功を収めてきた。
 
 監督キャリアを通じて3-5-2と4-3-2-1という2つのシステムを基本としてきたモンテッラだが、特定のシステムに対する強いこだわりは持っていない。ミランのシルビオ・ベルルスコーニ名誉会長が強いこだわりを持つ4-3-1-2も、4-3-2-1のバリエーションとして消化し、機能させるだけの戦術的手腕は間違いなく備えている。
 
 現時点で新戦力は昨シーズンにペスカーラでセリエB得点王となったジャンルカ・ラパドゥーラ(中国側は難色を示したが、ベルルスコーニ名誉会長の強い推しで獲得が決まったと言われる)だけで、同じFWではカルロス・バッカとルイス・アドリアーノの放出が濃厚と伝えられるなど、新チームの構成はまだ霧の中だ。
 
 とはいえ、中国資本に経営権が渡っても向こう3年間は名誉会長の座に収まると見られるベルルスコーニの意向をモンテッラが汲み、4バックの最終ラインを採用するとすれば、中盤から上の構成が3MF、2シャドー、1トップという4-3-2-1、いわゆる「クリスマスツリー型」となる可能性は低くない。
 
 契約が残り1年となった本田圭佑がもしこのままミランに残るとすれば、この4-3-2-1の右トップ下はそのプレースタイルにぴったりはまるポジションだ。
 
 ワイドに開くのではなく、SBとCBの「ゾーンの切れ目」にポジションを取って中盤からパスを引き出し、そこからFWとのコンビネーションで決定機を作り出す、あるいは逆サイドでの展開に合わせてオフ・ザ・ボールの動きでSBとCBの間、あるいはSBの背後を突いて裏に抜け出しラストパスを引き出すといった動きは、ここ数年間の本田が追求してきたフィニッシュの形だ。
 
 モンテッラは個人能力に攻撃を依存するよりも組織的なメカニズムと連携を重視するタイプの監督であり、彼が本田を評価してそのクオリティーを活かそうと考えるならば、主力のひとりとしてチームに貢献するチャンスを与えられることは十分期待できる。もしそうなれば、あとは本田自身がそれに応えられるかどうかが勝負になるだろう。
 
文:片野道郎
 
 
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