何気ないワンシーンにも、"イズム"が垣間見えた。

　２月初旬、FC町田ゼルビアの取材で、印象的な出来事があった。FW相馬勇紀に対する、黒田剛監督のちょっとした助言だ。

　その日のトレーニングは、シーズン開幕を間近に控えていただけに、ハードな内容だった。アップ、ランニングのメニューをこなした後、"鳥かご"でボールを回す側の相馬は、準備が整っていなかったのか、「タイム！ タイム！」と訴える。

　その様子を見た黒田監督が、穏やかな口調で言った。「勇紀、試合中にタイムは無いよ」。
【画像】ホーム天空の城にド迫力の歌声を響かせたFC町田ゼルビアサポーター

　指揮官の指摘が影響したかは分からない。ただ、その後の相馬の動きはキレキレで、周囲にも積極的に声をかけていた。

　わずかな隙や気の緩みにもアンテナを張る。これが黒田流のマネジメントなのだろうか。そうした一つひとつの積み重ねで、チームは着実に鍛えられていく。

　今季の町田は、開幕３戦は１勝２敗で黒星が先行。だが、４節以降は４勝２分けと負けなし。直近の川崎戦は２－２のドロー。一時逆転も追いつかれての引き分けだったが、貴重な勝点１を上積みし暫定首位に浮上した。

　上位争いに絡むチームで、相馬は開幕戦から全試合でスタメン出場を続けている。

取材・文●野口一郎（サッカーダイジェストWeb編集部）

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