興梠の30番。責任感と覚悟。「すごく悩んだ」前田直輝が広島の熱のこもったオファーに心打たれる。「優勝を狙えると本気で思っています」

2025年03月27日 寺田弘幸

追いかけてきた夢。リーグ戦のタイトルを獲りたい

広島で新たなキャリアを刻む前田。写真:寺田弘幸

 ウインドーが閉まるギリギリのタイミングで、広島が浦和の前田直輝を完全移籍で獲得した。さっそく3月27日にエディオンピースウイング広島で開かれた記者会見では、クラブの覚悟も、前田本人の覚悟も、とても強い移籍であることが語られた。

 それにしても、広島はこのオフから前線の出入りがとても激しい。ドウグラス・ヴィエイラ、ピエロス・ソティリウ、ゴンサロ・パシエンシアといった外国人FWとの契約を見送り、昨季に磐田で19得点を挙げたジャーメイン良の獲得に成功して新シーズンを迎えると、大卒ルーキーの中村草太がセンセーショナルな活躍を見せていく。

 そして、満田誠のG大阪への期限付き移籍とヴァレール・ジェルマンの獲得が発表され、トルガイ・アルスランが怪我で長期離脱して帰国することになった。

 文字通りに刻一刻と状況が移り変わっていくなか、ACL2をとても残念な形で敗退することになる。その責任を重く受け止めて雨野裕介強化本部長が辞任する事態になったなかで、前田の獲得をまとめた栗原圭介強化部長は、今回の移籍には監督の強い要望があったことを明かした。

「前線の選手を獲得するかしないか模索しているなか、監督から『やっぱり1枚欲しい』ということがありました。このタイミングで獲得できるかどうかは難しい状況で、前田選手が獲得できる可能性があったので話を進めたところ、非常にいろんなタイミングが合って、前田選手の気持ちも合って、移籍が決まりました」(栗原強化部長)

 指揮官の要求に応えられるところに、広島のクラブ規模が大きくなっていることと、タイトルへ懸ける思いがどんどん強まっていることが表われている。

 広島の熱のこもったオファーに、前田は心を強く揺さぶられた。

「本当に嬉しかったです。嬉しかったんですけど、素直に話すと、浦和レッズというクラブでリスペクトしている興梠慎三さんの30番を付けさせていただいた責任感というか、覚悟というか、そういうのがあったので、すごく悩んだ」
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 即断できなかった前田は、ミヒャエル・スキッベ監督が繰り広げているサッカーを体感できるワクワク感とタイトルへの思いが勝って決めた。

「今のメンバー、今の監督で、優勝を狙えると僕は本気で思っています。だからこそ、この決断をさせていただいた」

 タイトルの中でもリーグ戦のタイトルを獲りたい。それが30歳になった前田が追い掛ける夢でもある。

「若い頃はずっとチャンピオンズリーグに出たい気持ちが強かったので、活躍してヨーロッパっていう夢があった。でも、一回ヨーロッパから帰ってきて、30歳にもなって、正直もうヨーロッパに戻るのは難しいと思ってます。

 そこで、やっぱりリーグ戦のタイトルを獲りたい。小さい頃から夢見てきたし、あの光景をテレビで見てきて目に焼き付いているので、自分も獲りたいと思いますし、このチームならそれが可能だと思っています」

 2週間の中断を経て再開するJ1。広島は29日に京都との一戦に臨む。V・ジェルマンは出場停止を終えて、何の曇りもなく出場可能となり、もちろん前田も出場可能。戦力が出揃うなかで、広島はどんな攻撃を繰り広げていくのか。大きな注目が集まる。

取材・文●寺田弘幸

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