中村憲剛が「イニエスタみたい」と評する背番号10。大島僚太は歴史を変えるキーマンになれるか

2016年06月26日 いしかわ ごう

2点を先行された16節・福岡戦。逆境で輝いたのが、背番号10番の若武者だった。

大島の真骨頂はステップワーク。密集地帯でも相手に身体をぶつけられることなく簡単にかいくぐる。写真:石倉愛子

 今年1月、リオ五輪アジア最終予選を戦い抜き、優勝して出場権を獲得して帰国した後、大島僚太はその体験をこんな風に振り返っていた。

「自分はあの瞬間にピッチに立ってなかったですけど、優勝カップを掲げた時の嬉しかった気持ちはありました。これをフロンターレでも掲げたいと思いますね」

 クラブに戻ると、日本人として初めて背番号10番をつける選手としてシーズンがスタートした。周囲からの大きな期待をよそに、本人は背伸びせず、あくまで等身大だった。

「10番をつけるので頑張らないといけないと思ってます。でも自分はジュニーニョでもないし、レナトでもないですから。できることに全力を尽くそうと思ってます。基本的に気負わないですし、気にしない性格で申し訳ないという思いもありますけど、自分には期待しています」
 
 パスセンスと視野の広さを兼ね備えており、中村憲剛と2ボランチを組む期間が長かっため、周囲からはパサーだと思われている。しかし大島僚太の真骨頂は違うところにある。
 
 彼の真髄は、小柄な体格を駆使したそのステップワークだ。狭いエリアで人数をかけてボールを奪おうとしてくる相手に、身体をぶつけられることなく簡単にかいくぐる。その絶妙なトラップと、ステップワークを評して、中村が「取られそうで取られない。イニエスタみたい」と評していたほどである。
 
 今季は中村がトップ下でプレーする機会が増えたことで、中盤でゲームを仕切る仕事も求められるようになった。そして優勝のかかる一戦として迎えた16節・福岡戦は、大黒柱の中村憲剛が不在。前半に2点のビハインドを負った逆境で輝きを見せたのが、他でもない背番号10番の若武者だった。
 
「逆にこれをひっくり返したいと強く思いました。そのために、どう崩すか。自分たちがどれだけできるかを試されていると思いましたね」
 
 その言葉通り、彼は中盤を牽引した。前半には追撃弾となる小林悠への絶妙なアシストを記録し、後半には味方のシュートのこぼれ球に素早く反応し、同点弾となるPKを獲得している。ゲームを作りながら前線の攻撃に絡んでいく時の推進力と、守備に切り替わった時の球際の強さ。攻守両面で圧巻のプレーを見せ続けた。

次ページ巧いだけでない。泥臭いプレーも厭わない選手に変わりつつある。

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