【川崎】首位陥落の裏側でベテラン井川が悔やむ“苦い経験”の伝承ミス

2016年06月21日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「これが優勝したことがないチームの(試合の)入り方なのかなと」

福岡戦で負傷のエドゥアルドに代わってCBとしてプレーした井川(4番)。逆転優勝を懸けた大宮戦でも、出場機会があるかもしれない。 (C)SOCCER DIGEST

[J1・1stステージ16節]福岡2-2川崎 6月18日/レベスタ
 
 川崎が攻め、福岡は守りながらカウンターを狙う。首位と最下位の実力を考えれば、ゲーム展開は概ね予想できたはずだった。それだけに、ベンチスタートとなった井川祐輔には、チームが開始15分で2点を失う光景は信じ難かったに違いない。「2失点でチームは動揺したように見えたが?」と問われた井川は、「うーん……」と数秒考え、自分の考えを口にした。
 
「まあ、これが優勝したことがないチームの(試合の)入り方なのかなと。外から見ていて、そう思いました」
 
 左SBで先発フル出場した車屋紳太郎は、「完全に入り方のミス。ああいう攻撃をしてくるのは分かっていた」と振り返る。「守備陣の不用意な連係ミスからやられて、立て続けに2失点。精神的にキツイものがあった」という彼の言葉からも、川崎の面々が負ったダメージの大きさが窺える。それだけに、キャプテンの中村憲剛に次いで在籍歴の長い井川は、自分ができることがあったと悔しさを滲ませる。
 
「これまで大事な試合で負けてきた苦い経験を、試合前に伝えられたのかなと。経験者として後悔はあります」
 
"苦い経験"とは、過去J1リーグ戦2位が3回、ナビスコカップ準優勝が3回と "シルバーコレクター"に甘んじてきた歴史を指す。計6回のうち5回、厳しい現実を受け止めてきた井川だからこそ、言葉には重みがある。"経験者の金言"があったら、結果は違うものになっていたかもしれないが、プロの世界で「たら」「れば」は通用しない。井川も悔しさを内に秘め、最終節の大宮戦へ必死に気持ちを向ける。
 
「福岡戦に勝っていても、次の試合(大宮戦)も勝つしかなかった。僕たちのやることははっきりしているし、まだまだ可能性はあるので切り替えたい。次に向けての準備をするだけです」
 
 福岡戦翌日の6月20日、負傷交代したエドゥアルドが左ハムストリングの肉離れで約5週間チームを離れることが発表された。逆転優勝を懸けた大宮戦、前節で今季2試合目の出場を果たしたベテランの井川にもおそらく出場機会はあるだろう。「同じ轍は踏まない」――。井川が愛するチームに何を還元するのか、見ものだ。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
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