サブでもがき苦しんだ末、頼れるリーダーに。流経大柏のキャプテン佐藤夢真は準優勝を悔やむが、やり切った気持ちも「勇気や元気を与えられる選手になれたのかな」【選手権】

2025年01月13日 松尾祐希

腐らずにやり続け、夏にレギュラーを奪回

高校3年間を力いっぱい駆け抜けた流経大柏のキャプテン佐藤。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[高校選手権・決勝]前橋育英(群馬)1(9PK8)1 流経大柏(千葉)/1月13日/国立競技場

 日本一を懸けた選手権のファイナル。2007年度大会以来の優勝を目ざした流経大柏は前橋育英に惜敗した。

 前半12分にMF亀田歩夢(3年/富山内定)のゴールで先行したものの、31分にMF柴野快仁(2年)にゴールを決められて1-1に。その後は拮抗した展開となり、90分では決着がつかずに10分ハーフの延長戦へ。それでもスコアは動かず、迎えたPK戦は8-9で敗れた。

 敗北が決まった瞬間、流経大柏の主将でCBの佐藤夢真(3年)は、もうひとりのキャプテンであるCB奈須琉世(3年)とともに、崩れ落ちたGK加藤慶太(3年)のもとへ駆け寄った。

「慶太はこの大会を通じて2失点しか喫していない。後ろから支えてくれたし、最後まで諦めずにゴールマウスを守ってくれた。『本当にありがとう』という意味を込めて、慶太のところに行きました」(佐藤)

 欲しかった日本一はあと一歩のところで逃したが、仲間とともに戦った3年間は特別な時間だった。

 佐藤は1年次から学年リーダーを務め、最終学年になった今季は主将に就任。高校ラストイヤーに入ってからまとめ役に名乗り出た奈須と協力しながら、チームを束ねていった。

 だが、奈須がCBの主力としてU-18高円宮杯プレミアリーグEASTなどで活躍する一方で、自身はサブに回る試合もあった。プリンスリーグ関東2部に籍を置くBチームでピッチに立つこともあった。

 プレミア組とプリンス組は1チームで活動しており、トレーニングは一緒。試合の日だけは別々になるため、「自分はうまくいっていないのに、モチベーションが高い仲間たちをどうやって引っ張っていけばいいんだろう。自分を責める時もかなりあった」という。
【動画】歴史に残る大激闘! 前橋育英vs.流経大柏の決勝ダイジェスト
 それでも、腐らずにやり続けた佐藤は夏にレギュラーポジションを奪回。奈須と最終ラインでコンビを組み、安定したパフォーマンスで榎本雅大監督の信頼を勝ち取った。

 迎えた選手権本大会でも強固な守りを構築。タレントが揃う攻撃陣に目がいきがちだが、球際で強さを示した背番号5の存在なくして準優勝は成しえなかった。

 もちろん、優勝できなかった悔いは残るが、やり切った気持ちもある。

「自分のようにサッカーをやっている人のほとんどは、苦しい思いをしたり、挫折を経験する。サッカーはそういうスポーツでもあるけど、自分は乗り越えて国立のピッチで、大勢の人が見ている前でプレーできた。そういう意味では勇気や元気を与えられる選手になれたのかなと思います」

 卒業後は流通経済大に進学する。しかし、サッカーを続けるかはまだ決めていない。指導者の道も視野に入れているからだ。

「センターバックは本当に能力が必要なポジションで、身長も求められる。そういう意味で自分はプロになるのは難しい。自分で判断して、指導者になることも考えています」

 周りからは引き止められていて、佐藤と同じく流通経済大に進学する奈須も一緒にプレーしたいと言う。

「絶対に続けてほしいです。大学やプロの世界で一緒に日本一を目ざしたい」

 決断を下すには、もう少し時間がかかるかもしれない。しかし、仲間とともに歩んできた3年間があったからこそ今がある。どんな道であっても、この経験は次のステージで活かされるはずだ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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