期待値が低かったバルサと高かったマドリーの明暗。後者に必要なのは…【現地発コラム】

2024年12月02日 サッカーダイジェストWeb編集部

期待に胸を膨らませても、困難に備えることはできない

ここまでは明暗が分かれているバルサとマドリー。(C)Getty Images

 サッカーは様々なことをコントロールする必要がある。期待値のコントロールはその中でも最も重要なものの1つだ。そのやり方次第ではプラスにもマイナスにも作用する。

 前者の代表例は、昨シーズンのレアル・マドリーと今シーズンのバルセロナだ。昨シーズン開幕前、カリム・ベンゼマが去り、キリアン・エムバペが加入しなかったことはマドリーにとって大きな損失になると解釈されていた。おまけに守備ブロック全体に影響を及ぼす長期離脱者が続出。クラブはそれでも補強を見送った。

 当時、マドリーに期待する声は少なかった。しかし終わってみれば、逆境をバネにしてラ・リーガとチャンピオンズリーグ(CL)の2冠を達成。サッカー面だけではなく、エモーショナルな部分でも答えを見つけた結果だった。

 一方、うまくコントロールできなければ、期待値は時に鋭利なものへと変貌するという好例が、今シーズンのマドリーだ。故障者の復帰は戦力面で大きなプラスアルファをもたらすと解釈され、そのうえ別の惑星出身としか思えないエムバペが加入。すべてが容易になり、才能が努力を補ってくれると誰もが考えた。実際に言葉にしようがしまいが、ラ・リーガを悠々と闊歩し、CLでいつものように主人公感を出すマドリーを期待した。しかし、栄光を求めてプレーすることは、失敗を避けるためにプレーすることとは全く別物だ。
 
 期待に胸を膨らませても、困難に備えることはできない。マドリーの場合も、不安や混乱、世論の獣のような咆哮といった不愉快な招待客がやってくるのに、バルサ戦とミラン戦の2度の悪い結果(0-4と1-3)で十分だった。サッカーは、ここ数シーズン、マドリーに与えた幸運の分け前をライバルに譲ることにした。なんてことはない。サッカーは常に気まぐれなものだからだ。

 一方のバルサは、先述した通り今シーズンここまで期待値のコントロールがプラスに作用している。チームは弱点を抱え、それを補うためにラ・マシアに目を向け、プライド、犠牲精神、最大限の集中力に頼らざるを得なかった。しかしそれが功を奏した。

 ハンジ・フリックが素晴らしい仕事をしているのは紛れもない事実だが、彼が見つけたのは、物事を容易にし、道を切り開くために努力を惜しまないイレブンだった。我々は期待値が低かった分、その頑張りを称えなければならない。
 

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