【札幌】未だ進化の途上――都倉賢は“真のストライカー”ではない

2016年05月25日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「逃げ道を作らず、ひたすらに責任を背負うだけ」

札幌の最前線で抜群の存在感を放つ都倉。ゴールからは約1か月半ほど遠ざかっているが、焦りはまったくない。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 2014年は37試合・14得点、15年は34試合・13得点。187㌢・80㌔の堂々とした体躯、ゴールハンターとしての嗅覚、エゴイズム、そして「俺が軸だ」と言わんばかりの雰囲気を身体中から発している。札幌の都倉賢は、"個性派"という言葉だけでは表現しきれない存在感をピッチ上で放っている。
 
 今季も12試合で6ゴールと、チーム総得点(13試合を終えて17得点)の3分の1を叩き出し、最大の得点源であり続けている。3月6日に行なわれた2節・岐阜戦では、前半だけでハットトリックを達成。特に3得点目は「自分らしかった」と自賛するゴールだった。
 
 40分に自陣で対峙したレオミネイロからボールを奪うと、力強いドリブルを開始。秋葉を弾き飛ばしてペナルティアーク手前まで運ぶと、さらに田代を制して、ジュリーニョに預ける。進藤が態勢を崩しながらもクロスを折り返すと、反転ボレーでネットに突き刺した。
 
 この間、18秒。守備での献身性、身体の強さ、冷静な判断力、正確なシュート精度。都倉の都倉たる所以が凝縮した時間だった。
 
 その後も、3月20日の4節・清水戦、3月26日の5節・京都戦とゴールを積み重ねた。だが、体調不良で欠場した4月3日の6節・町田戦からぷっつりとゴールが途絶えてしまう。約1か月半、都倉のゴール数が6から増えることはなかった。
 
 それでも焦りはない。「誰でも外す時は外すし、決まる時は決まるもの」と飄々としている。「コンディションさえ上がってくれば、自ずと勝利に直結するゴールやプレーを見せられる」という自信が根底にある。
 
 その言葉を体現したのが、5月22日の14節・讃岐戦だった。攻撃では最前線で身体を張ってボールを収め、相手DF陣と駆け引きしながら裏への抜け出しを狙う。守備でもスプリントを欠かさない。すべては「得点を狙う以外の仕事をこなすことで、自分のゴールにつながると、"逆算"して考えられるようになった」からだ。
 
 42分、福森が左サイドから上げたアーリークロスに逆サイドで合わせて折り返し、内村の2試合連続ゴールを生む。もちろん内村は大きく喜んだが、都倉も何度もガッツポーズを繰り返した。自身のゴールではないが、描いた通りのプレーだったはず。
 
 虎の子の1点を守り切って、札幌は5節連続の1-0勝利。まさに"勝利に直結するプレー"を見せてくれたわけだ。勝点3を上乗せしたことで、熊本地震の影響で1試合消化が少ないなか、札幌は2位の岡山と勝点4差の首位を走っている。
 
「もっともっとぶっちぎれる」――。
 
 5月13日に実施したインタビューで、都倉は反省を込めて話してくれた。それは、チームとして、選手個々としてまだクオリティに物足りなさを感じているからだろう。フィニッシュ精度、パスの引き出し方の向上が必須だと理解している。
 
 同時に、"真のストライカー"へと変貌を遂げるには "ワンタッチゴール"を増やす必要があることも自認している。「(大久保)嘉人さんや(佐藤)寿人さんみたいに、対峙したDFが嫌がるポジショニングを常に意識する」ことで、「シーズン20ゴールをコンスタントに奪えると思っている」。
 
 相手に畏怖を、味方に安心感を与えられる選手になるために。そしてJ1昇格を果たすために。「逃げ道を作らず、ひたすらに責任を背負うだけ」。北の雄を牽引する男は、未だ進化の途上にいる。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
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