【熊本】震災後、再開2戦目から見えた“ある変化”。蘇るアスリート精神と彼らの日常

2016年05月25日 井芹貴志

再開後、2連敗と結果は出ていない。しかし、戦術面、メンタル面ともに前進できた手応えがある。

日立柏サッカー場での試合の後、熊本と水戸の選手たちは場内を一周し、ファン・サポーターに感謝を伝えた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 柏レイソルの協力のもと、日立柏サッカー場で行なわれたリーグ戦復帰後初のホームゲーム。水戸と対戦した熊本は終盤の失点で0−1と敗れ、勝利を地元へ届けることはできなかった。
 
 しかしその一方、1週間前の千葉戦からは前進できた手応えがある。
 
 インフルエンザや負傷での離脱者が相次ぐなか、「今のメンバーの中でやれる最大限のことはどういう感じか考えて、後ろの人数を少し厚くして、耐えるゲームをしたい」(清川浩行監督)との狙いで今季初めて3バックで臨んだことも関係しているかもしれない。実際に、ゲームを終えた清川監督は、「前節からすると我慢できた時間は伸びたと思います」との評価を口にしている。
 
 さらに、その要因について問われ、「戦い方が変わったというより、コンディションが上がってきた部分もある」と語ったように、地震が起きた直後の時期と比べれば、徐々にサッカーに集中できる状態に戻ってきたこともその理由だろう。ただそれ以上に、選手たち自身がより現実的に、勝点を伸ばしていくためのプレー、試合運びを意識するようになってきたことが大きい。
 
 リーグ復帰戦が古巣との対戦となったことで、「感情も含めて、自分もチームも、うまくコントロールできなかった」と千葉戦を振り返っていた巻誠一郎は、水戸戦に臨む前日、こう話していた。
 
「球際に厳しく行くとかハードワークするといったベースになるところは残しながら、自分たちのテンポで落ち着いてボールを回す時間を増やさないといけない。それはなにも自分たちがボールを握る時間を増やすことだけではなくて、相手が持っている時間でもカウンターのチャンスをうかがいながら守るとか、守備でも自分たちのペースに持っていくということ。勝ちに結びつけるためにも、気持ちを全面に出すところと抑えて冷静に判断するところのバランスが必要」
 
 実際、水戸戦では3バックに加え、左右のウィングバックも下がって2列のブロックを作りつつ、はめ込んでから連動してボール奪取し、攻撃につなぐ場面が何度か見られた。フィニッシュワークの部分では、まだ連係やアイデアの不足も感じられたが、ボールを動かしながらチャンスを創出する意識は、チーム全体で表現できていた。
 

次ページ試合ができる"喜び"から、勝利への"渇望"へと変化。選手たちには、アスリートとしてのメンタリティが蘇りつつある。

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