フォデンにロドリをマンマークさせるような愚かな策を
敗戦に茫然とするベリンガム。(C)Getty Images
選手という「個」がチームの戦術を旋回させることは、ないことではない。むしろ、しばしばあるだろう。特に際立った「個」の力を持つ選手は、その人そのものが戦術になるのだ。
EURO2024では、決勝に進出したイングランドが最たる例だろう。
昨シーズンのプレミアリーグ、攻撃的サッカーでしのぎを削ったマンチェスター・シティ、アーセナルの選手たちを数多く擁していた。ジョン・ストーンズ、カイル・ウォーカー、デクラン・ライス、ブカヨ・サカ、フィル・フォデンは実力者と言える。
他にもチェルシーでブレイクしたコール・パーマー、バイエルン・ミュンヘンでエースストライカーとして君臨したハリー・ケインも擁していた。
要所に人材がいたことで、その「個」はどうにかチームを成立させていたわけだが…。
ガレス・サウスゲイト監督の統率力は控え目に言っても、いま一つだった。明確な戦いのアイデアが見えない。4バック、3バックを駆使したが、行き当たりばったりで、変化の効果は乏しかった。
「チームが選手の実力を生かし切れていない」
その印象が強かった。
【動画】激怒したベリンガムがクーラーボックスを蹴り飛ばす決定的シーン
EURO2024では、決勝に進出したイングランドが最たる例だろう。
昨シーズンのプレミアリーグ、攻撃的サッカーでしのぎを削ったマンチェスター・シティ、アーセナルの選手たちを数多く擁していた。ジョン・ストーンズ、カイル・ウォーカー、デクラン・ライス、ブカヨ・サカ、フィル・フォデンは実力者と言える。
他にもチェルシーでブレイクしたコール・パーマー、バイエルン・ミュンヘンでエースストライカーとして君臨したハリー・ケインも擁していた。
要所に人材がいたことで、その「個」はどうにかチームを成立させていたわけだが…。
ガレス・サウスゲイト監督の統率力は控え目に言っても、いま一つだった。明確な戦いのアイデアが見えない。4バック、3バックを駆使したが、行き当たりばったりで、変化の効果は乏しかった。
「チームが選手の実力を生かし切れていない」
その印象が強かった。
【動画】激怒したベリンガムがクーラーボックスを蹴り飛ばす決定的シーン
例えば決勝のスペイン戦、サウスゲイトはフォデンにロドリをマンマークさせるような愚かな策を示した。シティの指揮官であるジョゼップ・グアルディオラだったら、決して選ばない戦い方だろう。チームとして決めた戦術が、選手を縛り付けてしまい、攻守にノッキングを引き起こした。
しかし、行き詰まった戦いを一人で動かせるだけの選手がいた。
レアル・マドリーで欧州王者に輝いているジュード・ベリンガムは、EUROでも帝王感を放っていた。フィジカルギフテッドの選手と言えるが、それに甘んじていない。勝利への欲が人並外れて強く、そのために必要な適応力や技術も持っている。例えばラウンド16のスロバキア戦、ベリンガムは後半アディショナルタイムに劇的な同点弾を決めたが、その覇気でチームに気運を呼び込み、逆転劇を呼び込んだ。
スペイン戦も、ベリンガムは個人では抜きん出ていた。ターン一つで3人を置き去りにする剛毅さがあったし、波状攻撃を一人で止めるようなボール奪取力まで備えていた。同点に追いつくパーマーのシュートをアシストしたのも、彼だった。
しかしチーム戦術の中、それぞれの選手が輝くスペインは次第にイングランドを凌駕した。チームが個人を輝かせ、個人がチームを強くする。その関係性は強力だった。
イングランドは個人では負けていなかったかもしれない。しかし、個人を生かす戦術はなかった。それが彼らの限界で、決勝まで辿り着けたのが僥倖と言える。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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しかし、行き詰まった戦いを一人で動かせるだけの選手がいた。
レアル・マドリーで欧州王者に輝いているジュード・ベリンガムは、EUROでも帝王感を放っていた。フィジカルギフテッドの選手と言えるが、それに甘んじていない。勝利への欲が人並外れて強く、そのために必要な適応力や技術も持っている。例えばラウンド16のスロバキア戦、ベリンガムは後半アディショナルタイムに劇的な同点弾を決めたが、その覇気でチームに気運を呼び込み、逆転劇を呼び込んだ。
スペイン戦も、ベリンガムは個人では抜きん出ていた。ターン一つで3人を置き去りにする剛毅さがあったし、波状攻撃を一人で止めるようなボール奪取力まで備えていた。同点に追いつくパーマーのシュートをアシストしたのも、彼だった。
しかしチーム戦術の中、それぞれの選手が輝くスペインは次第にイングランドを凌駕した。チームが個人を輝かせ、個人がチームを強くする。その関係性は強力だった。
イングランドは個人では負けていなかったかもしれない。しかし、個人を生かす戦術はなかった。それが彼らの限界で、決勝まで辿り着けたのが僥倖と言える。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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