「全力を尽くしたら、人生で報われることがある――」スペイン代表指揮官が最後に残した“グッとくる言葉”【コラム】

2024年07月23日 中野吉之伴

「他のどの試合も難しかった」一戦とは?

大会中に17歳になったヤマル(左)をレギュラーとして起用したデ・ラ・フエンテ監督の手腕も見事だった。(C)Getty Images

 EUROドイツ大会でスペイン代表はグループリーグから7戦ですべて勝利しての完全優勝を果たした。この全勝優勝というのは1984年大会のフランス代表以来となる。当時は参加国がまだ少なく、グループリーグの後すぐに準決勝だった時代。7連勝というのはこれ以上なく特筆すべき戦績だ。

 選手個々の持つクオリティに加え、それぞれの組み合わせ、チームとしての戦い方、そして出場機会が少ない選手や全てのスタッフを含めたチームとしてのまとまりは、一つの理想を体現したといえるのではないだろうか。そのチーム作りのあり方からは学ぶべきものが非常に多い。

 スペインのルイス・デ・ラ・フエンテ監督はどのようにチームを作り上げたのだろう。

「私にはメリットがあった。以前から知っている選手が多かったからだ。そしてこの1年半で知り合った選手たちとは、どういうふうにアプローチするかを探りながらコミュニケーションを取っていた。その辺りは育成で取り組んでいた時に身につけたものだ。いいチームが素晴らしいチームになるためには、人間的な美徳や価値観がものすごく大事。ベースがあった中でそうした関わり合いができたことがこのチームを生み出すことになった」

 とはいえ、監督やコーチングスタッフがどれだけ苦心して、工夫を凝らしてアプローチをしても、それが選手に響かなければ、選手に確かな感受性とともに戦う意欲がなければ力にはならない。その点に関してデ・ラ・フエンテは決勝後の記者会見で、選手の取り組みに大きな賛辞を贈っていた。

「彼らは疲れを知らないし、成長への意欲がすごい。本当に誇りに思うよ。彼ら選手は私の仕事を簡単にしてくれた。我々が成し遂げたことを喜ばしく思う。素晴らしい世代でさらに素晴らしい将来が待っている」
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 イタリア、ドイツ、フランスと過去のワールドカップ、EUROの優勝経験国を軒並み倒しての優勝でもあった。ドイツメディアの中には、唯一スペインと延長戦までもつれ込んだのが自分達だったというのを少なからずの慰めにしているところも少なくはない。デ・ラ・フエンテは優勝までの道のりをどのように受け止めていたのだろう。

「異なるタイプのチームとの対戦だった。決勝に進出するまでのドイツ、フランス、イタリア、それにクロアチアだってハイレベルなサッカーをしていた。ドイツは自分達と似たようなスタイルのチームで本当に厳しい試合だった。我々は120分全力で戦った。他のどの試合も難しかったよ。でも相手の強さとの対応もあったが、我々はいつも自分達のパフォーマンスに目を向けてきた。選手たちがどれだけの自信と意識をもってサッカーをしてくれたことか」
 

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