“脱マドリー・脱バルサ”がもたらしたスペイン代表の偉業。ククレジャ、ファビアン、オルモらは過小評価されていた【現地発コラム】

2024年07月21日 エル・パイス紙

マドリーとバルセロナに肥育されることに慣れきってしまった

今大会で躍動したオルモ(左)とククレジャ(右)。(C)Getty Images

 素晴らしいプレー、ペナルティエリア外からのシュート、逆境への強さ、チームとしての成熟度。現スペイン代表を早くもティキタカを旗印に掲げて黄金期を築いたチームと比較する者もいる。個人的にまだその域には達していないと思うが、一つ確かなのは、EUROでスペインが、我々に興奮と幸せをもたらしてくれたことだ。そしてそれはサプライズだった。

「驚いているのは君たちだ。我々は何があるかは分かっていた」

 ルイス・デ・ラ・フエンテ監督は報道陣を前にして、したり顔でこう語っていた。確かに彼が言うことは一理ある。

 我々ジャーナリストも含め、大半のスペイン国民にとってサプライズだった。最終メンバーが発表された後の共通のコメントは、「燃えているもの以上のロウはない」であり、「どこにでも勝てるし、どこにでも負けるチームだ」という診断だった。ある種のワクワク感はあったが、信頼性はなかった。そしてもちろん、多くの選手たちがここまで優秀であるとは思われていなかった。それはなぜか?
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 私は、スペインサッカーがレアル・マドリーとバルセロナに肥育されることに慣れきってしまっていることと関係があるように思う。昨今、2強に対する世間での注目度は高まるばかりだ。この傾向は21世紀に入る頃から加速し、「リオネル・メッシvsクリスティアーノ・ロナウド」、「ジョゼップ・グアルディオラ&ジョゼ・モウリーニョ」という対決の構図がさらにそれを可視化させた。

 クラシコはサン・フェルミンのようなスペインの有名な祭りすら凌いで、輸出品として最も価値が高い商品となっている。マドリード、バルセロナでそれぞれ2紙ずつ発行されている計4紙のスポーツ新聞が両クラブ関連のニュースにこれでもかというほど紙面を割いている。ラジオやテレビ、ネットもそれは同様だ。

 逆にマドリーやバルサのレーダーから外れるものは、注目度が下がる。だから、EUROに臨んだスペイン代表には2強に所属する選手がほとんどない、あるいはいつもより少なかったため、他のチームにも優れた選手がいることを認識させるには、今回のように派手なことをする必要があった。

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