絶体絶命のピンチを防いだGKチョン・ソンリョンとFW小林悠の印象的な熱い抱擁。柏戦で見た川崎を支え続けた男たちの意地

2024年07月21日 本田健介(サッカーダイジェスト)

7試合ぶりの勝利を掴む

小林(写真左)とGKチョン・ソンリョンが勝利を喜ぶ。PKのピンチをしのいだ。写真:田中研治(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第24節]柏 2-3 川崎/7月20日/三協フロンテア柏スタジアム

 またもドロー決着かと思われた。

 先制しても終盤に追いつかれるデジャブのような内容で、リーグ戦で5試合連続のドローを演じていた川崎は、アウェーの柏戦では、開始10分の怒涛の攻撃で、CF山田新が一気に2ゴールを奪う。しかし直後にセットプレーから失点するもったない展開で後半へ折り返し、67分にはこの試合でも同点に追いつかれた。

 それでも79分にはキャプテン・脇坂泰斗が意地のゴールを決めるも、後半アディショナルタイムにはエリア内での橘田健人のプレーがVARのすえにハンドと判定されて絶体絶命のピンチを迎えたのだ。

 時計の針はすでに90分を越えていた。これを決められれば、またドローで試合を終える可能性が高い。試合を観ていて勝点3獲得を諦めかけた人も少なくなかったのではないか。

 そんな窮地を救ったのが 39歳の頼れる守護神チョン・ソンリョンであった。

「GKコーチがセットプレーの情報を提供してくれるので、今日も情報を信じて先に飛ばないように最大限我慢して止めることができました」

 柏の10番、マテウス・サヴィオと対峙したチョン・ソンリョンはギリギリまで相手の動きを見極めながら左へ飛ぶ。やや中央寄り低めのボールはチョン・ソンリョンの守備範囲だった。まさに起死回生のセーブであった。
【動画】チョン・ソンリョンのPKセーブ!
 
 PKの直前、チョン・ソンリョンはチームをともに支え続けてきた途中出場の小林悠から「絶対に止めてくれ」とパワーを注入されていた。

 その小林は最終盤には身体にむち打ち、足を痛そうにしながらも全力でボールを追った。そんな姿にグッときたサポーターも多いだろう

 ふたりの勝利への覚悟を感じていたからこそ、試合後の抱擁シーンも印象的であった。

 さらに豊富な経験値を誇る家長昭博は、後半開始前の円陣などでは、力強く味方へメッセージを送り、守備にも奔走。

 先日から戦列復帰を果たしている途中出場の大島僚太はこの日も、度肝を抜く縦パスを通し、PKのシーンではゴール裏の柏サポーターとやり取りをしているような姿も見られたが、間を置く意図もあったようで、キッカーのサヴィオには「時間を使ってしまい申し訳ない」と声をかけたという。その大島の試合後の力強いガッツポーズも記憶に残る。

 クラブを長年支え続けてきた選手たちの奮闘に主将の脇坂は「ベテランの選手は経験をチームに還元してくれているのは頼もしいですし、ただそれに任せないように、僕らや若手がもっと頑張っていきたいです」と語るように、中堅や若手も、その背中をしっかり追っている。

 その意味ではチームとして良いバランスになってきたと言えるのだろう。

 まだ順位的には降格圏と勝点4差と予断は許されない。

 それでもこの柏戦を良いキッカケにしていきたい。
 
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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