なぜ優勝候補ではなかったスペインがEURO決勝に進めたのか。「過去に記憶がない」ほど他を凌駕する強さを現地記者が読み解く【コラム】

2024年07月14日 エル・パイス紙

貫かれているのは対戦相手を問わず大胆であり続ける精神

快進撃の象徴となっているヤマル(左)とニコ・ウィリアムス(右)。(C)Getty Images

 代表レベルのメジャー大会で、EURO2024のスペイン代表ほどを見せたチームは記憶にない。ここまで6戦全勝で、どのチームよりも良いサッカーを披露している。

 ドイツの各スタジアムでは、様々な国を旅してきた選手たちが臆することなく結果の不確実性に立ち向かい、スペインの試合は毎回エキサイティングな冒険と化している。決して状況に流されることなく、ルーテインから遠ざかる。リスクと隣り合わせの大胆さを自分たちが見せなければ感動はなく、今回のEUROは味気ないものになってしまうとまるで確信しているようにプレーしている。

 貫かれているのは、対戦相手を問わず大胆であり続ける精神だ。クロアチア、イタリア、アルバニア、ジョージア、ドイツ、フランスとこれまでの6試合はいずれも勝ち方は異なるが、野心、質の高いサッカー、攻撃力、リスクテイク、そして試合のさまざまな局面を読み取る術をベースにした戦い方は常に同じだった。
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 ルイス・デ・ラ・フエンテが招集したメンバー26人の顔ぶれを見れば、これは決して偶然ではないことが分かる。特筆すべきは、主力の多くが複数のチーム、複数のリーグでプレーしてきた選手で占められていることだ。レアル・マドリーとバルセロナの選手が多数派を形成していた時代とは大違いだ。

 ロドリ、ファビアン・ルイス、ダニ・オルモ、アルバロ・モラタ、エメリック・ラポルト、マルク・ククレジャ、ミケル・メリーノがそうしたケースに該当し、今回のEURO の試合展開がそうであるように、異なるチーム、リーグに適応したり、異なる言語を学んだりと環境の変化に対応する必要があった。

 彼らはルーツや文化が異なる人たちと共生するだけではなく、その過程の中で外から取り入れた要素をエネルギーに変える、つまり代謝を行うように、リスクを取ることの大切さを体得した。

 その点、ニコ・ウィリアムスとラミネ・ヤマルは異なる。前者はアスレティック・ビルバオ、後者はバルサでしかプレーしたことがなく、本当の意味を知らないままリスクを取り続けているからだ。若者特有の無垢さや生意気さで、ドリブルで逆を取ったり、驚かせたりしながら危険を生み出す。2人は冒険心と反抗心を楽しみ、その想いに感謝の意を示す現在のスペインのチームカラーに見事にマッチしている。

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