2年後のW杯で決勝が行なわれる会場だが、サッカー熱はほぼ感じられず。だが観衆は8万人超、主役の一発に地鳴りのような大歓声も【コパ・アメリカ戦記】

2024年07月11日 浅田真樹

カナダを一蹴したアルゼンチンが連覇に王手

コパ・アメリカを告知するバナーなども見当たらず。ようやく見つけたと思った看板も、マラドーナのファンイベントの広告だった。写真:浅田真樹

 コパ・アメリカ2024準決勝、アルゼンチン対カナダの試合が行なわれたのは、ニューヨークのメットライフスタジアム(正確に言えば、スタジアムがあるのはニュージャージー)。

 2年後のワールドカップでは決勝が行なわれる会場だが、今のところ、マンハッタンを歩いていても、サッカー熱はほとんど感じられない。

 現在コパ・アメリカが行なわれていることを知らせるバナーなども、まったくと言っていいほど目にすることはなく、ようやく見つけたと思った看板も、大会とは無関係なマラドーナのファンイベントの広告だった。

 とはいえ、この試合の観衆は8万人超。スタジアム内には、確かな熱が充満していたことは間違いない。

 実際、試合は立ち上がりから互角の打ち合いで進んでいた。歴代最多優勝を誇るアルゼンチンと、コパ・アメリカ初出場のカナダという対照的な顔合わせではあったが、格の違いは感じられなかった。

 しかし、先に試合を動かしたのは、前回王者のアルゼンチンである。

 22分、ロドリゴ・デ・パウルがディフェンスラインの背後へ送ったパスを受け、GKと1対1になったフリアン・アルバレスが落ち着いて決めて先制ゴール。これで試合の流れを引き寄せたアルゼンチンが、次第に主導権を握っていく。

 そしてこの試合の、というより、この大会の大きな見せ場がやってきたのは、55分のことだった。

 右サイドからリオネル・メッシがデ・パウルとのパス交換でボックス内に進入すると、一度は相手にカットされたボールを拾ったエンソ・フェルナンデスがシュート。このシュートをメッシがGKの前で触ってコースを変え、今大会初ゴールを決めたのである。

 ついに決まった主役のゴールに、スタンドは歓喜。地鳴りのような大歓声を味方につけたアルゼンチンが、そのままカナダを2-0で押し切った。
【動画】待ってました!メッシが今大会初ゴール!
 この大会でカナダがアルゼンチンに敗れるのは、グループステージ初戦に続き、2度目のこと。しかも、スコアは2試合とも2-0だったが、今大会5試合目で強豪と対戦することの難しさがあったと、カナダのジェシー・マーシュ監督が明かす。

「アルゼンチンは大会を通して多くの選手をローテーションさせ、試合ごとに同じ選手を起用しないように、様々な選手を様々なタイミングで起用していたので注意が必要だった」

 対照的に、カナダはこれまでの4試合でほぼフル出場を続けていた主力のふたり、前線のジョナサン・デビッドと、中盤のスティーブン・エウスタキオを、実質的に今大会初の途中交代をさせなければならなかったあたりに、チーム力の差がうかがえた(デビッドはペルー戦で後半アディショナルタイムに途中交代している)。

 それだけふたりは、指揮官にとって替えの利かない存在だったわけだが、マーシュ監督は「(選手層を厚くするために)他の選手にチャンスを与えたかった」との意図もあったと語る一方で、「ふたりとも、精神的にも肉体的にも多くを費やしてきた。体力的に限界だった」とも吐露している。

 選手層の違いを見せつける結果となった、アルゼンチンのリオネル・スカローニ監督は「カナダは良いプレーをしていて、手強いライバルだった」と称え、こう語る。

「決勝はとても難しい試合になるだろうが、カップを勝ち取るまで落ち着いて一歩ずつ進んでいく。(決勝の相手より)試合間隔が1日多く、私たちは恵まれた状況にあるので、全員を回復させて日曜日には素晴らしい試合をしたい」

 アルゼンチンが大会連覇、そして、ワールドカップに続くビッグタイトル獲得へ王手をかけた。

取材・文●浅田真樹(スポーツライター)

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