【レスター】プレミア新王者の知られざるホームタウンの魅力。日本人の岡崎慎司と外国人オーナーが愛される理由

2016年05月06日 鈴木祐子

700年の伝統を誇る市場には「リネカー」の看板が現在も。

街の中心にはイングランド国王リチャード3世の像と彼の遺骨を埋葬した大聖堂が。レスターは由緒正しい土地でもある。 (C) Getty Images

 プレミアリーグ初挑戦の岡崎慎司が加入した今シーズン、クラブ創設132年目にして初の戴冠を成し遂げたレスター・シティ。そのユニークなクラブカルチャーは、地元の伝統と異文化の風習がうまく融合して、育まれてきた。プレミアリーグ新王者のホームタウンを訪ね歩く。
 
――◇――◇――
 
 イングランド中東部に位置するレスターは、アジア、中東、アフリカなど世界中からの移民が集う国際色豊かな都市であると同時に、シェイクスピアの史劇の主人公にもなったイングランド国王リチャード3世の遺骨が発掘されて話題になった由緒正しい場所でもある。
 
 15世紀を生きた君主が眠るこの町の中心にあるのが、700年の伝統を誇る「レスター・マーケット」。300を超えるストール(露店・屋台店)では食材や香辛料、花や靴までもが売られており、現在でも地元市民の生活を支える市場として親しまれているのだ。
 
 このマーケットには、レスター・シティのレジェンド、ガリー・リネカーがかつて父親と共に野菜や果物を売っていたストールが残っている。
 
 すでに店は売却され他人の手に渡ったが、マーケットの伝統としてストールの名前は引き継ぐ決まりになっており、いまなおリネカーの文字の書かれた看板が掲げられ、アメリカや中国のメディアが取材に訪れたこともあるという。
 
 威勢のいい掛け声の飛び交う下町風の市場が、国際的に注目される――。リネカーの差響きはさすがだ。
 
 イングランドにはさまざまな形でクラブへの愛を表現するファンがいるが、レスターで私が出会ったのは、クラブのファーストチームでプレーした全ての選手のサインを収集しようとしている親子だった。
 
 父マットが少年時代に集め始めたコレクションに、息子ディランのものが加わって2人は現在までに1000以上の選手のサインを集めたという。新しい選手が入団すれば、集めなければならないサインも増える果てなき挑戦。だが、マットは言う。
 
「ディランがこのコレクションを自分の息子に引き継ぎ、その子がまたその息子に引き継ぐというように、何世代にも渡って続いていくことを願っているよ」
 
 この街には、クラブを支える確かな愛情が根付いている。
 

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