パリ五輪メンバー発表の席で大岩剛監督が松木玖生選外理由を訊かれて「選ばれた選手たちの話をしたい」とコメントしたように、メディアの前でなんでもかんでも答えてくれるわけではない。

　ある意味当然だと思う。ワールドカップの試合前日会見でも、戦術やスタメンについてべらべらとまくし立てる監督は少なくとも著者の記憶では皆無。手の内を明かすメリットは正直ないだろう。

　だから、今回、なでしこジャパンの池田太監督の独占インタビューでも戦術関連の質問は控えた（聞きたい気持ちはもちろんあった）。パリ五輪前の大切な時期にそんな質問をしても具体的な回答をもらえるわけがないと勝手ながら判断したからだ。

　訊いてみないと分からないじゃないか、そんなメディアの姿勢では困るとの見方もあるだろうが、そうした批判を承知のうえでのスタンスである。そんな想いがあった中で、池田監督に次の質問をぶつけてみた。
 

「試合の前日会見でも記者さんとの駆け引きがありますよね？ それをやるだけでも疲れるのではないかと思いますが、どうですか？」

　すると、池田監督は「だから会見が面白くないですよね？」と笑顔で答える。

　面白くなくて当然。そこで情報を出す方がリスキーだと思うからだ。おそらく言いたいことはあるだろうが、しっかりとブレーキをかけて発言している。そうした姿勢が、池田監督の答からは見て取れた。

 「申し訳ないと思っています」と言う池田監督に対して、むしろ感謝を述べたい。こんな失礼かつ無茶な質問にも答えてくれて「ありがとうございます」と。

取材・文●白鳥和洋（サッカーダイジェストTV編集部）

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