ようやく本領発揮のヴィニシウス。涼やかなスタジアムの中で、彼の周りだけがやけに熱を帯びているかのようだった【コパ・アメリカ戦記】

2024年06月30日 浅田真樹

チームとして機能すれば、必ず違いを生み出す

パラグアイ対ブラジルの試合が行なわれたアレジアント・スタジアム。今年2月には全米最大のスポーツイベント、スーパーボウルも開催された。写真:浅田真樹

 コパ・アメリカ2024のグループD、パラグアイ対ブラジルの試合が行なわれたのは、アメリカが誇るエンタテインメント都市、ラスベガスだ。

 試合会場となったアレジアント・スタジアムは2020年に完成したばかり。普段はNFLのレイダースがフランチャイズとして使用しており、今年2月には全米最大のスポーツイベント、スーパーボウルも開催されている。

 砂漠の真ん中に存在する巨大歓楽街は気温40度を超え、時折吹く風は熱風だったが、屋根付き最新スタジアムの中に入れば、強い日差しを避けられるだけでなく空調もきいていて、快適そのものだった。

 とはいえ、そんな快適空間とは裏腹に、試合は両チームの選手が入り乱れてヒートアップするシーンが何度も起こる、かなり激しいものとなった。

「前半40分までは互角の試合だったと思う」

 パラグアイのダニエル・ガルネロ監督が試合後、そう話していたように、試合は立ち上がりから両チームが互いに攻め合う展開で進んでいた。

 31分には、ブラジルは絶好の得点機だったPKを、ルーカス・パケタが右に外して先制ならず。互角どころか、むしろ流れはパラグアイに傾いているかに思われた。

 ところが、わずか4分後の35分、ブラジルは流れるようなパスワークから、最後はヴィニシウス・ジュニオールがGKとの1対1を落ち着いて制してゴール。先に試合を動かしたのは、ブラジルだった。
【動画】ブラジルが4発完勝! パラグアイ戦ハイライト
 それでも、まだ1点差。試合はどう転ぶか分からなかった。

 だが、「2点目は避けるべきだった。重要な場面で相手がゴールを決め、あっという間に大きな差をつけられた」とは、ガルネロ監督。43分にはサヴィーニョが、45+5分には再びヴィニシウスが、いずれもパラグアイのわずかなスキを突いてゴールを決め、たちまちスコアは3-0に広がった。

 パラグアイは後半開始早々の48分、オマル・アルデレーテのミドルシュートで1点を返したものの、65分に再び与えたPKを、今度はルーカス・パケタに冷静に決められ、万事休す。試合はそのまま、ブラジルが4-1で勝利した。

 ガルネロ監督の表現を借りれば、「互角の試合での重要な場面」でゴールを、それも2ゴールを決めたのは、ヴィニシウスである。

 すでにレアル・マドリーでエースの地位を確立しているヴィニシウスだが、これがコパ・アメリカ初ゴール。加えて、ブラジル代表での1試合2ゴールは初めてだというのだから、少々意外な印象だ。

 しかしながら、これまでにリーガやチャンピオンズリーグではチームを救う貴重なゴールをいくつも決めてきているのだから、ブラジルが王座奪還を目ざす今大会でも、ようやく本領発揮と考えていいのだろう。

 ブラジルのドリバウ・ジュニオール監督は、「彼は前の試合(コスタリカ戦)で常に2対1で厳しくマークされていた」と語り、こう続ける。

「だが、今日は異なるやり方で完璧なパフォーマンスを見せてくれた」

 指揮官がコスタリカ戦との違いとして挙げたのは、「(左も右も)サイドで3人の選手がうまくプレーできたこと」と「ボールポゼッションがより効果的にできたこと」。つまりは、チームとしての機能性に問題がなければ、ヴィニシウスは必ず違いを生み出してくれるというわけだ。

 ゴール後には雄叫びを上げ、熱狂するスタンドをさらに煽る背番号7。涼やかなスタジアムの中で彼の周りだけが、やけに熱を帯びているかのようだった。

取材・文●浅田真樹(スポーツライター)

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