攻撃を活性化させた本田は“違い”を見せながらも64分で交代…

2016年05月02日 サッカーダイジェストWeb編集部

試合運びが拙く、選手は自信を喪失、指揮官は追い詰められ…。

自陣での守備や献身性よりも、相手陣内での攻撃のプレーが光った本田。ミランにとっては大きな武器になると思われるが……。 (C) Getty Images

 5月1日(現地時間)、セリエA第36節でミランは、ホームでセリエB降格圏内のフロジノーネと対戦し、常に先行を許す苦しい展開の末に3-3で引き分けた。
 
 本田圭佑がトップ下として2試合連続でスタメン出場を果たした一戦。ヨーロッパリーグ出場圏内の6位をキープするためにも、前節で20位のヴェローナに逆転負けを喫したミランは、この19位の相手を絶対に倒さなければならなかった。
 
 しかし、2分で先制したのはフロジノーネだった。ペナルティエリア手前でボールを受けたパガニーニが、中央に流れながらシュート。対応したデ・シリオはシュートコースを閉められず、ボールはゴールネットを揺らした。
 
 いきなりビハインドを負ったミランは反撃に転じるも、序盤は攻守でチームがバラバラ。どこで仕掛けるか、どこでボールを奪うかが揃わず、拙攻拙守に終始する。
 
 本田は序盤、主に右サイドに流れてボールを待ち、守備時には素早く自陣に戻るいつもの動きを見せていたが、プレーに絡む回数は少なく、あまり効果的ではなかった。しかし、ボールを受けて前を向けるようになると、好パスを連発し、攻撃を活性化させていく。
 
 バッカ、クツカがシュートチャンスを得、本田自身は28分に左からのクロスに豪快なバイシクルで合わせる。41分にもマウリからタイミング良くボールを受け、きわどいミドルを放った。
 
 明らかに流れはミランにあった。ところが……44分、ゴール前30メートルはあろうかという距離から、クラグルに直接FKを決められてしまう。壁を1枚にしたことで、シュートコースを与えてしまった点に、悔いが残った。
 
 重い空気に包まれてハーフタイムを過ごしたミラン。そして後半開始1分で相手のハンドによってPKを獲得するも、バロテッリのシュートは球威、コースともに甘く、GKバルディに止められてしまう。
 
 サン・シーロは失望のため息に包まれるが、その4分後、一転して歓声が轟く。アバーテのゴールラインぎりぎりのクロスをGKバルディが押え切れずに後方へこぼし、バッカが詰めたのだ。アバーテに見事なスルーパスを通したのは、本田だった。
 
 この試合では、本田がボールを受けて前を向いた時、連動して周囲が動けば、高い確率で良いプレーに繋がった。グラウンダー、浮き球で相手DFの裏に何度もパスを通すなど、本田は相手陣内で存在感を示した。
 
 しかしこの日のミランには、良い流れになると、必ずその後に失望がついて回った。55分、中盤でモントリーボがヘッドで後方にそらしたボールをアレックスがクリアできず、ディオニージに持ち込まれて、フロジノーネに3点目を許したのである。
 
 再び2点のビハインドを負ってから9分後、ブロッキ監督は本田を下げ、FWルイス・アドリアーノを投入。その後、さらにメネーズを入れたことから、指揮官が素早く前線にボールを送り、相手ゴールに近い位置でプレーを続けようとした意図が読み取れる。
 
 選手はこれに応えて最初こそ闘志を見せるも、ミスでプレーが停滞し、周囲との連係もずれ、徐々にトーンダウンしていった。
 
 この悪い流れを変えたのは、交代で入った2人のアタッカーではなく、73分からピッチに立ったSBのアントネッリ。出場からわずか1分で、CKからアレックスのヘッドでの折り返しを胸でトラップし、オーバーヘッドで後方のネットに突き刺したのだ。
 
 そして90分を過ぎたところで、フロジノーネのDFがハンドを犯し、ミランは2つ目のPKを得る幸運に恵まれる。これを、今度はメネーズがゴール左隅に力強く決め、土壇場で追い付く。最後は、カウンターからバロテッリの強烈なシュートがクロスバーを叩いて試合は終わった。
 
 勝点1を拾ったかたちのミランだが、負けに等しい試合だった。試合運びは拙く、選手は自信を失っている。ブロッキ監督は結果を出さなければならないという重圧で追い詰められているようでもあり……。
 
 そんななかで、最も冷静で、相手を怖れず、効果的なプレーを続けたのが本田だ。「ミランの背番号10を背負う器ではない」といわれ続けた男は、この試合では間違いなく、他選手との"違い"を見せていた。
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