【広島】吉野が待望のJ1リーグ戦デビューで新たなる野望。「死ぬ気で序列を覆したい」

2016年04月30日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「リズムを掴んだら攻撃に…と思っていたけど、試合に入るのに精一杯な部分があった」

移籍3年目でJ1リーグ戦初出場も、慎重になりすぎて特長とする持ち出しやサイドチェンジは影を潜めてしまった。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 0-1のスコア以上に完敗を喫した磐田戦、数少ない明るい話題が、DF吉野恭平のJ1リーグ戦デビューだった。14年夏に加入以降、対人の守備と正確なビルドアップに対する首脳陣の評価は高かったが、度重なる負傷離脱でチャンスを喪失。今回、不動のリベロ・千葉和彦が累積警告による出場停止に伴い、塩谷司や宮原和也の起用も練習では試されていたなか、プロ4年目にしてついにJ1リーグ戦のピッチに立つ権利を手にした。
 
 しかし、初めて体験するリーグ戦のプレッシャーから動きが硬く、ビルドアップも森﨑和幸との横パスに終始。慎重になりすぎて本来の積極性は影を潜めてしまった。
 
「立ち上がりは(相手が前からプレスに)来ると思ったので、セーフティでプレーしながら、リズムを掴んだら持ち上がって攻撃を展開していきたいと思っていました。ただ、試合に入るのに精一杯な部分があって……。横パス以外にも、ドリブルやサイドチェンジを挟んでいたら、もっと違った展開になっていたんじゃないかなと」
 
 ようやく後半になって、最終ラインから前に持ち出してパスをつなぐシーンが何回か見られたが、吉野はそれよりも69分に交代する直前に失点した場面のプレーを自戒する。磐田の小林祐希からゴール前に駆け込む中村太亮にパスが通った際、オフサイドかの確認で一瞬副審のほうへ目線を切った。しかし、オフサイドの笛はならず、結果的にシュートへの反応が遅れてゴールを許してしまったのだ。
 
「(失点の場面は)オフサイドを確認しようと一度止まってしまった。しっかりプレーを続けていれば、もっと寄せられて、(シュートを)身体に当てることはできたはずだし、たぶん失点はなかったと思います」
 
 キャプテンの青山敏弘は「吉野は十分やってますよ」と話し、森保監督も「J1リーグ戦初出場のなかで、自分のやれるプレーは出してくれたと思う」と評した。さらに言えば、森﨑和幸が言うように、選手にはそれぞれ特長があって、千葉と比較することも大きな意味は成さない。

 しかし、リオ五輪世代で手倉森ジャパンでのプレー経験も持つ実力からすれば、物足りなさは否めない。なにより、それは吉野自身が痛感している。
 
「ああいう小さなところでも、J1では勝負が決まってしまう。失点に絡んでしまい、チームも負けてしまったのでモヤモヤした気持ちが残りました」

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