川崎からアメリカ挑戦を決めた山根視来の“今”。日本で抱え続けた葛藤とは?【インタビュー/パート1】

2024年03月29日 本田健介(サッカーダイジェスト)

異国での貴重な経験の日々

アメリカでの挑戦を決断した山根。貴重な経験を積んでいる。(C)Geety Images

 2024年、川崎からMLSのロサンゼルス・ギャラクシーへの移籍を決めたのが、日本代表としてカタール・ワールドカップにも出場した右SBの山根視来である。30歳での初の海外挑戦。その姿を追ったインタビューを3回に分けてお届けしよう。

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 大谷翔平の一挙手一投足に沸き、アリーナでは八村塁が眩いスポットライトを浴びる。

 今、日本人の歓声が大きく増しているアメリカ・ロサンゼルス。夢の詰まったこの街で、またひとり、新たな男が壮大なチャレンジをスタートさせている。

 山根視来、30歳。2020年に湘南から川崎に移籍して以降、数々のタイトルを手にし、2022年のカタール・ワールドカップ出場も果たした右SBである。

「お久しぶりです。こっちの生活ですか? 夜は暇でしょうがないんですよ(笑)。実際はそんなことないんでしょうが、夜出かけるのはやっぱり怖いじゃないですか。なんだかひとりで歩いているとゾクゾクするというか(苦笑)。だからひとりで英語の勉強をしていることが多いですかね」

 MLSの開幕直前、山根は相変わらず裏表のない言葉でこちらを笑わせてくれる。ちなみに英語は自称「中学1年生レベル」。だからこそレッスンには精力的なんだとか。

「確認のテストのようなものもあって、今日も怒られないために、ちゃんと宿題をやって頑張って勉強しておいて良かったです。褒めてもらえました(笑)」

 その笑顔はまるで新たな発見を手にした少年のようだ。

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 取材に応じてくれた時点では、まだ家族は渡米しておらず、自身も家を探しながらホテル住まいをしている最中。それでも初の海外での生活は刺激の連続だという。

「昨日は引っ越しに向けてマットレスを買いに行ったんですが、どのマットレスが良いか伝えるにもすごく時間がかかってしまって。

 2時間くらいして、やっと支払いにいけるぞとなったら、まだこっちの銀行のカードを持っていなくて、日本のカードでは支払いができないと(苦笑)。結局買えず、クラブのスタッフの人に『あとで払うから代わりに買ってほしい』とお願いしました。さすがに疲れましたが、真新しいことばかり。それにこっちの人はみんな優しくて、店の人もめちゃくちゃ時間がかかったのに『気にするな』と。周りの人に助けてもらっていますね」

 さらに大きな存在もいる。日本代表に続き、チームメイトとなった吉田麻也である。

「こっちにきて約1か月ですが、すでに4、5回は麻也くんの家族と食事をさせてもらっていて、今日も自宅に誘ってもらい、ご馳走になってきたばかりなんですよ。本当にありがたいですね。

 あの人以上に頼りになる日本人っていないんじゃないですかね。でも、だからこそミーティングなどでも、麻也くんになんでも聞かないように、できるだけ自分で意思疎通をできるように努力しています。ただ試合中にどうしても周りに伝えたいことがあると、麻也くんに助けてもらうようにしています。本当にいつもサポートしてくれるので、感謝してもし切れない存在ですね」

 持ち前の積極性と、周囲のサポート受けながら、山根の新天地での挑戦は一歩ずつ進んでいるのである。
 

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