【大宮】“昇り続けるオレンジ”へ。正念場の10日間がやってきた

2016年03月11日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

不明瞭さが招いた悲劇を反省し、クラブは継続へと舵を切る。

「残留争いの大宮」というレッテルを剥がすために。明確なスタイルを掲げて、トップディビジョンでの戦いに挑んでいる。写真:徳原隆元

 2014年12月6日、大宮はリーグ最終戦でC大阪に2-0で勝利した。しかし、15位の清水が甲府とスコアレスドローとなったため、勝点1が届かず。05年のJ1昇格から10シーズン目にして、大宮はJ2に降格した。成績不振での監督交代も多く、また、選手の声に圧される形での解任劇もあり、その度に戦術のブレが起こった。厳しく言えば、"チームスタイル"と"クラブが目指す方向性"の不明瞭さが招いた悲劇であった。

 その教訓を活かし、クラブは「継続」へと大きく舵を切る。14シーズン途中から指揮を執ったクラブOBの渋谷洋樹監督に続投を要請し、残留争いのなかで粘りを見せた選手たちの慰留に力を注いだ。主力ではズラタン(浦和)と高橋祥平(神戸)こそ流出したが、それでも家長昭博やD・ムルジャを始めとしたチームの核だけでなく、ベンチを温めたサブ組の多くもクラブに残る選択をした。

 迎えた昨季、「攻守に主導権を握るサッカー」を掲げた。漫然とJ1に復帰するのではない。J1へと帰った際に上位争いに加われるだけの地力を付けるべく、"大宮スタイル"の構築に心血を注いだ。適切なポジションを素早く取り、崩す意図を持ってパスをつなぐ。ボールを奪われればリトリートして自陣にこもるのではなく、前からプレスを掛ける。攻守に渡ってアグレッシブなサッカーを志向した。

 結果として、この試みは成功した。15年シーズンは家長の負傷離脱などのアクシデントでスタートダッシュこそ失敗したが、15節でJ2首位に立つと、その座を譲ることなく駆け抜けた。渋谷監督が序列を決めず、練習や試合で結果を出した者を起用する方針を貫き、チーム力は底上げされた。それは怪我によって最終ラインの顔触れがガラッと変わっても、安定して堅守を見せた事実からも読み取れる。

 1年でトップディビジョンに舞い戻った16年シーズンは、様々な意味で真価を問われる年になる。「残留争いの大宮」というレッテルを剥がせるのか。培ったスタイルは通用するのか。たとえ結果がついてこなくとも、クラブは監督の首をすげ替えずに、本当に大宮スタイルを"継続"するのか。

 また、ここ数年のJ2王者の翌年のJ1での成績を見返せば、今季の大宮の動向には熱い視線が注がれているはずだ。11年の柏はリーグ制覇。12年のFC東京は10位だったが、昨シーズンは上位争いを演じた。また、14年のG大阪はリーグ戦とナビスコカップと天皇杯を制して3冠を達成し、15年の湘南は年間総合8位である。大宮が躍進してもまったく不思議はない。

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