森保監督に似たアプローチ。アルビ指揮官・松橋力蔵は選手の背中を見て、何を感じたか?来季は「登る山を間違えないようにしたい」

2023年12月24日 元川悦子

自身は後ろからチーム全体の様子を観察

今季の終了前に続投が発表された松橋監督。「新潟の未来に繋いでいくために、引き続き真剣に取り組んでまいります」と意気込む。写真:鈴木颯太朗

 2022年にアルビレックス新潟の指揮官に就任し、1年目でJ1昇格を達成し、2年目の23年はJ1で10位に導いた松橋力蔵監督。指導経験は豊富だが、その大半が横浜F・マリノスのアカデミー。横浜や新潟でコーチを経験したが、それでも監督としてここまでの成果を残したことを、驚きを持って受け止めた人も少なくないだろう。

「自分の中で何かをコントロールしようという感覚で接してはいません。それが自然とマネジメントになっているかもしれません。もちろん本当に必要なことは、必要なことで伝えますし、それはポジティブでもネガティブなこともない。普通に向き合ってきただけだし、違う力を使うとか、特別なことはしていません。

 僕は結構コーチとして長いので、選手と面と向かって向き合うというより、後ろから見つめることが多かった。そのスタンスがいつ始まったかは分かりませんけど、そういう目で見ている自分はコーチになってから早い時期、育成の時からそうでしたね」と、松橋監督は20年超の指導者人生の中で、選手と向き合う自分なりのスタイルを構築してきたことを明かす。

 J1初挑戦だった今季も、特に何かを変えなかった。試合前のミーティングも各担当コーチに説明を任せ、自身は後ろからチーム全体の様子を見ているケースも少なくなかったという。
 
「今季は試合を重ねるごとに、みんなが自信を持ってやってくれていると感じていました。最初は緊張感もあったと思いますけど、トライしていることが結果に表われ始めた時の選手の行動や姿勢を見ると、『自信を持って取り組んでいるな』と。それはトレーニングや試合、試合当日のホテルでのミーティングの姿からも感じられました。

 試合当日のミーティングは僕が全部、前にいるわけではなくて、他の担当コーチに話をしてもらって、自分は後ろから見ていたりすることもあるんですけど、彼らの背中からいろんなことを勝手に感じていました。

『今日はやりそうだな』とか、『そわそわ、ガヤガヤしてるけど、今日のガヤガヤはちょっと違うな』とか、『すごく静かだな、悲壮感を感じてるのかな』と思ったり。自分がそう見たいからかもしれないけど、そういう選手の背中を見ながら、試合を重ねるごとに自信や堂々としてる感じをすごく多く受けるようになりました」

 こうしたアプローチは、日本代表の森保一監督に似ていると言っていい。森保監督もトレーニング時は、名波浩コーチや前田遼一コーチらに任せ、自分は遠くから全体を見守っていることが多い。

 そのほうが様々な変化を敏感に感じ取れるし、実際、そのやり方で成功している。「成功する日本人監督」というのは、選手・スタッフと良い距離感を保ちつつ、彼らの自主性を引き出し、自信を抱かせることができる人物なのかもしれない。

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