【広島】同僚に「神」と言わしめる佐藤寿人の金字塔。メモリアルゴールに凝縮された「嗅覚」と「ストライカーの矜持」と「ライバル心」

2016年03月07日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「できれば158点目は自分の形で決めたかったけど、ゴールはゴール」

158点目のメモリアルゴールは、身体に当たって入るという本人の意図した形ではなかったが、“そこにいる”嗅覚が金字塔を生んだ。 写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

「もう神、ゴッドですよ」。
 
 158個のゴールを積み上げた佐藤寿人の凄さを問われた、柴﨑晃誠の回答である。同じサッカー選手にここまで言わせるのだから、それがいかに偉大な記録なのかが窺える。

【J1 PHOTO ハイライト】1st ステージ・2節 名古屋1-1広島

 名古屋戦の43分、1点ビハインドの局面で歴史的瞬間は訪れる。ピーター・ウタカの展開から右サイドのミキッチが折り返し、柴﨑がダイレクトシュート。そのボールを佐藤が身体で軌道を変えてゴールネットを揺らし、中山雅史氏を抜いてJ1通算得点で単独トップに躍り出た。当初、スタジアムのアナウンスでは柴﨑のゴールと発表されたが、当の本人は自分のゴールだと確信していたという。
 
「(柴﨑)晃誠のゴールだというアナウンスは聞こえなかったんです。僕は自分が決めたと思って、そのままサポーターの方に行って。サポーターも僕のコールをしてくれたんで、僕のゴールかなと」
 
 J1新記録のメモリアルゴールは、ある意味佐藤の"予期せぬ"形で生まれた。得点シーンは「押し込みたいよりも、(柴﨑のシュートが)当たってしまう」と身体を動かしたところに当たったと振り返る。
 
「当たった感触は背中というか、身体の後ろというか。できれば自分の形で158点目は決めたかったですね。まあ、ゴールはゴールだし、結果的に(ゴール前に)詰めていたのが良かったかなと。失点の部分で足を引っ張ってしまったので、なんとか取り返したいと思っていました」
 
 泥臭い形にはなったが、"そこにいる"嗅覚こそ、佐藤がエースとして、また日本を代表するストライカーとして君臨してきた所以である。「DFの視野にいるFWは怖くない」と常にDFの視界から消えることを意識し、得点チャンスを狙ってきた。仙台時代には選手として一緒にプレーした経験がある森保監督も、「ゴール前でクオリティを発揮する、嗅覚を持って得点を決めるという部分を今日も発揮してくれた。J1得点数において単独トップになることは本当に素晴らしい」と称賛を惜しまなかった。

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