【FC東京】リオ五輪本大会まで半年のタイミングで室屋がプロ入りを決めた訳。「自分にプレッシャーをかけた状態が一番成長できる」

2016年02月09日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「五輪の連続出場が懸かる最終予選を戦って、自分に自信を持てるようになった」

大学3年生であり、スポーツ推薦で入学した室屋のプロ入りには乗り越えるべき壁がいくつもあったが、栗田監督(左)らの「(室屋を)オリンピックに送り出したい」という強い想いがFC東京加入を実現させた。 写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 唯一の大学生としてU-23日本代表に名を連ね、リオ五輪の出場権獲得に貢献した室屋成が2月8日、母校の明治大でFC東京への加入内定会見を行なった。
 
 注目を浴びたのは、移籍先はもとより、大学卒業を待たずしての決断だった点だ。現在、政治経済学部3年の室屋がプロ入りするためには、サッカー部を退部しなければならない。また、「サッカーをすることを前提」(栗田大輔監督)としたスポーツ推薦で明治大の門戸を叩いたゆえ、指定校推薦で卒業を待たずにプロ入りした長友佑都(明治大出身/現インテル)とは、経るべきプロセスが大きく異なるという。
 
 しかし今回、サッカーを退部し、明治大に籍を置きながらのFC東京入りが実現したのは、大学側が「彼をオリンピックに送り出したい気持ちが強かった」からだ。室屋はプロ入りの条件として栗田監督から課されていた、「リオ五輪アジア最終予選のメンバー23人に選ばれること」「五輪出場権を獲得すること」を見事にクリア。自分の力で多くの人々のサポートを勝ち取り、「スポーツ推薦で入った選手が、サッカー部を途中で退部してプロに行くのは初めてのケース」(栗田監督)となった。
 
 では、なぜ卒業を待たず、Jのシーズン開幕まで1か月を切ったタイミングでの決断だったのか。室屋は昨年8月に特別指定選手としてFC東京に合流した際、「ベンチ入りはできるだろう」と思っていたというが、実際は一度もベンチ入りできず、10月に関東大学サッカーリーグに戻る挫折を味わっている。3クラブから正式オファーが届いたとはいえ、試合に出られなければ、8月に控えるリオ五輪本大会のメンバー選考やゲーム感にも影響しかねない。それでも、五輪最終予選を通して得た自信がプロへのチャレンジを決断させた。
 
「五輪の連続出場が懸かるなかで、プレッシャーと戦う時間がいい経験になりました。最終予選でメンタル面が一番成長したと思うし、自分に自信を持てるようになった。サッカー選手である以上、ポジションが保証されていないのは理解しています。でも、出番をもらえる保証がないプレッシャーの中に身を置いて、試合に出場できたらきっと成長できる。ここでポジションを掴むことに意義がある、と思いました」(室屋)
 

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