【岩本輝雄】滑らかでスムーズ。判断も絶妙。ボランチ香川真司、一つひとつのプレーに熟練の技巧

2023年08月21日 岩本輝雄

得点場面では、左右の揺さぶりが効いていたと思う

実績十分の香川。ボランチでも存在感は際立っていた。写真:鈴木颯太朗

[J1第24節]横浜FC 1-0 C大阪/8月20日/ニッパツ三ツ沢球技場

 残留争いを勝ち抜きたい横浜FCと、上位進出を狙うセレッソの一戦。結果は、レオ・セアラの一発を守り抜いたセレッソが、1-0で逃げ切ってみせた。

 この試合で楽しみにしていたのが、セレッソの香川。アタッカータイプの彼が、ボランチでどんなプレーを見せるのか。

 まず目を引いたのが、ポジショニング。相手が捕まえづらいところにいて、ボールを出し入れする。中盤の位置で、すすっと、ほんのちょっと移動するだけ。でも、それが実に効果的で、味方のパスコースを作ってあげる。

 横浜FCは引き気味に構えているから、そこまでプレッシャーがなかったかもしれないけど、どちらかと言えば、相手がプレッシャーをかけづらい位置にいたと思う。常に微調整しながら、スペースを見つけ出す。

 ボールを収めれば、前後左右にテンポ良くパスを散らしてリズムを作る。細かい部分では、左に出すような構えをして、相手を寄せてから、すぐ右に出して味方が攻めやすいようにもする。
 
 得点シーンもそうだよね。左サイドに寄っていって、ターンして右に展開。それからまた中央で受けて、今度は左に出す。そこからのクロスをレオ・セアラが仕留めた。香川の左右の揺さぶりが効いていたと思う。
【動画】香川→カピシャーバ→レオ・セアラがヘッドでズドン!
 バタバタしないし、ボールの扱いが滑らかというか、スムーズ。パスも味方が受けやすいように、優しく出す。落ち着かせる、ダイレクトでスピードアップする、タメを作る。その判断も絶妙。ここぞというタイミングで前にも出ていく。自由自在だった。

 最後は足をちょっとつったみたいだったけど、フル出場するなかで、ほとんどミスはなかったんじゃないかな。難しいことはやらないで、シンプルにプレー。もっとも、簡単そうに見えるけど、誰もができるものではないと思う。

 日本代表や欧州クラブと、世界基準で戦ってきた選手。一つひとつのプレーに熟練の技巧がつまっている。それを改めて、感じたかな。

 ボランチというポジションも、今の香川には合っているように思う。個人的には、もっと決定的な仕事に絡める2列目で見たいけど、ボランチではまた違った魅力が引き出されそうだし、"味のあるプレー"で、これからも観ている人を楽しませてほしいね。

【著者プロフィール】
岩本輝雄(いわもと・てるお)/1972年5月2日、51歳。神奈川県横浜市出身。現役時代はフジタ/平塚、京都、川崎、V川崎、仙台、名古屋でプレー。仙台時代に決めた"40メートルFK弾"は今も語り草に。元日本代表10番。引退後は解説者や指導者として活躍。「フットボールトラベラー」の肩書で、欧州CLから地元の高校サッカーまで、ジャンル・カテゴリーを問わずフットボールを研究する日々を過ごす。

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