【黒田剛監督の持論】経営者必見の組織論「最悪な状況なのが…」「コーチングがスタッフの自己満足で終わってはよくない」

2023年08月07日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

組織の進み方として重要なのが──

組織論について語ってくれた黒田監督。写真:塚本侃太(サッカーダイジェスト写真部)

 これを読めば、なぜFC町田ゼルビアが強いのか理解できる部分がある。もしかすると、目から鱗が落ちる感覚を覚えるかもしれない。今季から町田を率いる黒田監督の組織論には、そう思わせるだけの説得力があった。

  組織として何より重要なのは、黒田監督曰く「コーチングスタッフ、強化部、フロントらみんなが一体化すること」だ。

「監督が頭でっかちになって、あれもできるこれもできる、あれもやりたい、これもやりたい、あれやっとけ、これやっとけ、というのは独りよがりで裸の王様状態。それが組織にとって最悪な状況。私も青森山田で30年やってきたから、そのあたりはよく分かっています。学校経営やホームルーム経営にしても、小さい組織でもすごく神経を使って、みんなが同じベクトルの方向に進んでいく。これが組織の進み方としてすごく重要です」

 しかし、そう簡単にできるものではない。黒田監督が「マネジメントする側としてはそれを実践するのが一番難しい」と話している点からも、それは分かる。

「誰かの役割がない。何をやっていのか分からない。いてもいなくても一緒。そういうスタッフや選手でひとりでもいることが最悪なこと。一方で、みんなが『わー』とコーチングして、何が何だか分からない状況も効率が悪いわけで、誰かが主導権を握り、組織を整理しないといけません」

 コーチングについては捉え方が大事だ。

「話している人からすると、コーチングをしているという自身の達成感とか、自己満足に過ぎない。本来は聞いている人が納得したり、理解を示すのがコーチングの目的。コーチングがスタッフの自己満足で終わってはよくない。だから、(スタッフの)ひとりはリーダーとなって適切な指導や落とし込みをする。周りはサイドコーチングだけをやっていく。そうやって、次のコーチ、次のコーチに渡していければ一体感が出る」
 
 一人ひとりが確かな責任感を持って与えられた役割をこなす。そうしてスムーズに回っている組織だと、「勝った時の喜びが倍増するし、負けた時の悔しさを自分に矢印として向けられる」。

「負けた時も勝った時も矢印が全部監督に向くのはよくない。一般組織でも矢印が社長に向くのではなく、それぞれのセクションの部長や課長が、または社員一人ひとりが(序列の中で)威厳を持って仕事をする。そういうシステムを作ったほうが組織としては頑丈。ブレない組織になっていく。みんなが責任を持ってやることですごく大きい、みんなが自立した良い組織ができてくる」

 そう力説する黒田監督だが、「あまり策に溺れることなく、いろんな人の話を聞きながらやりたいです。プロ1年目の監督が偉そうに話すことは何もないですよ」と謙虚な姿勢を示す。ただし──。

「こだわりたいところ、勝負に徹するところ、または心技体というスポーツのベースとなるところで、少しでもブレている部分があればやっぱり許さないところもある」

 これまで培った経験がそう言わせるのだろう。確固たる信念と独りよがりではいけないという配慮。そのふたつを併せ持つ黒田監督の下で町田が大躍進を遂げているのは決して偶然ではない。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

【動画】黒田監督が語る「組織論」

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2023明治安田生命J2リーグ第30節
FC町田ゼルビア-ジュビロ磐田
8月12日(土)18時キックオフ
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