「日本にはない強度があった」STVVで開幕先発デビューを飾った伊藤涼太郎が“縦ボランチ”に手応え!「すごく面白いですよ」【現地発】

2023年07月31日 中田徹

パスサッカーへのモデルチェンジで躍進なるか

新加入の伊藤(写真)は開幕スタメンを飾り、STVVの中盤で大いに存在を示した。(C)STVV

 1924年2月23年創設のシント=トロイデンVV(STVV)にとって、今季は100周年の節目となる大事なシーズンだ。古豪スタンダールをホームに迎えた7月30日の開幕戦、終始試合を優位に進めていたカナリーズ(STVVの愛称)は86分、FWコイタの左足ミドルシュートが炸裂して1-0の勝利を飾った。

 STVVのボール支配率は57%。シュートはSTVVが10本、スタンダールは7本。私が「昨シーズンと違いますね」と声を掛けると、クリーンシートを達成したシュミット・ダニエルは「全然違うでしょ」と満面の笑みで答えた。
 
 昨シーズンのSTVVはリーグ12位。ベルギーでは「クラブ規模からすると大健闘」と成績が評価されている一方、リスク回避の試合運びに「サッカーのコンテンツが低い」という声も多かった。今シーズンは新指揮官として元ヴィッセル神戸監督のトルステン・フィンク氏を招き、チームを一新。リアクションサッカーからポゼッションサッカーに生まれ変わろうとしている。

 昨シーズンに11回のクリーンシートを記録するなど、堅守のSTVVを支えたシュミットは、ホラーバッハ政権下ではセーフティーなキックに終始したものだ。しかし、フィンク新監督のもとではパスをリズミカルにつないだり、サイドに散らしたりと、最後尾からのビルドアップに貢献している。

「やっていて本当に楽しいですよ。代表ともちょっと近いサッカーというか。こういうサッカーをしているほうが僕個人としては代表にもつながると思う。そういう意味ではいい監督のもとでやれていると思います」(シュミット)

 日本人フィールドプレーヤーのなかで開幕スタメンの座を射止めたのは伊藤涼太郎ひとりだった。プレシーズン中に地元メディア、サポーターの間で『デ・マヒエル(ザ・マジシャン)』という呼称が定着したテクニシャンは、立ち上がりはCFカヤとポジションを入れ替わりながらボールを前に運び、13分にはミドルシュートを放つ。試合の経過とともにアンカーの左脇に落ちてゲームを作るなど広範囲にプレー。ダブルタッチでマーカーを外すなどして観客席を沸かせ、後半20分に拍手を浴びながらベンチへ退いた。

「チームとしては勝ててよかったですが、個人的には何も残せなかった。これから徐々に慣れていくのではなく、次のゲームからしっかり結果を残していきたいです」(伊藤)

 試合直後に反省したのは前半、味方からパスを足下に受けてターンしようとしたところ、スタンダールのMFが壁となって立ちふさがりロストしてしまったプレーだ。

「強度には日本にないものがあった。ああいった相手のパワーを逆手にとって利用していくこと、そこが自分の持ち味なのでもっとそういったところを出していきたい」(伊藤)
 
 フィンク監督の志向するサッカーについて、伊藤は「僕個人としてもすごく面白い。戦術のこと、モチベーションのこと、どちらにも優れている監督で、一サッカー選手として勉強になることをおっしゃっていただけています」と言う。

 スタンダール戦の入りではCFカヤを意識したポジショニングを取っていたので、私はトップ下、ないしは攻撃的MFと思い込んでいたが、伊藤曰く「ほぼトップ下という感じなんですけれど、2ボランチ。でも縦関係の2ボランチですね。これを2ボランチと言って良いのか分かりませんが」と解説する。

「ボランチを縦関係にするサッカーはシント・トロイデンしかやってない。そのやり方が自分にはすごく面白いと感じます。もっと理解しないといけませんが、もっともっと自分が上に行くにあたって重要なこと。僕のポジションは自由を与えられていて、縦関係だけでなくいろいろなバリエーションがあります」(伊藤)

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