【高校サッカー】青森山田 5-0 聖和学園|「東北勢対決」で垣間見えた“プライド”と“信念”

2016年01月03日 小林健志

「負け方もダイナミックで良かった」(加見監督)

先制点の起点になった北城(6番)は、守備でも安定したプレーを披露した。 (写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

「我々は唯一、プレミアリーグでやっている東北のチーム。『東北のトップという"プライド"を示す大一番だ。ここで負けたら東北2番になるので、しっかり結果を出せ』と試合前に言いました」

 そう黒田剛監督が述べた通り、青森山田には東北勢には絶対に勝つという強いプライドがあった。

 それは立ち上がりから、球際の攻防で如実に見えた。聖和学園の選手がボールを持つと2人、3人と囲んでドリブル突破を阻む。そしてボールを奪うと、空いたスペースを突いて速攻を仕掛けた。前半8分、キャプテンのDF北城俊幸からサイドチェンジのボールを受けたMF豊島祐希が右足で浮き球のシュートを放つ。これがDFに当たってコースが変わってゴール――。
 
 先制点を挙げた青森山田は、以後も激しいプレッシャーで相手のミスを誘い、次々とカウンター攻撃を仕掛けた。前半35分には右サイドを抜け出したFW鳴海彰人のクロスを左サイドハーフの嵯峨理久がゴールに押し込む。後半16分には右サイドの崩しから高橋壱晟、後半23分には左サイドの崩しから鳴海がゴール。さらに終盤の後半39分には湘南入り内定のMF神谷優太がダメ押しゴールを決め、最終的に5-0で圧勝した。
 
 一方の聖和学園にとっては、先制点が重くのしかかった。「球際の駆け引きで急ぎ過ぎてしまった。あまり言いたくはなかったが『もっとゆっくりやって良い』と言った」。普段は試合中ほとんど指示を出さない加見成司監督が指示を出さざるを得なかったほど、聖和学園は焦って前のめりになった。そして、裏のスペースを突かれて失点を重ねた。
 
 大勝した1回戦(野洲に7-1で勝利)とはまったく逆の結末に終わった。前回大会の尚志に続き、2回戦で手の内を熟知した東北勢と対戦し、対策を完璧に練られて敗れた。
 
 それでも聖和学園の加見監督は「点を取られようがなにしようが、自分たちのサッカーをやるために頑張ってきた。最後まで貫いてやった。後悔はなにも無い」とドリブルで相手を抜くことにこだわるサッカーを貫いた選手たちの労をねぎらった。
 
「勝ち方も良かったですが、負け方もダイナミックで良かったですね」
 加見監督はそう言って笑った。そして――。
 
「もっと上手くならないとダメですね。青森山田さんはプレミアEAST2位で、これが全国の上のレベル。この速さ、強さに対しても自分たちの上手さをどう出せるかが課題です。1年間の課題をいただいたので、もっとボールに触ってもっと上手くなってここへ帰って来たい」
 
 過去2回の出場時同様、今回も2回戦の壁は破れなかったが、今春には自校内に念願の人工芝グラウンドも完成予定。ますます足下の技術を磨ける環境を手にする聖和学園は、この先になにを見つけるのか。今後も目が離せない。
 
取材・文:小林健志(フリーライター)

【選手権PHOTOハイライト】桐光学園×長崎南山|青森山田×聖和学園
 
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