【高校選手権】駒澤大高 0(3PK0)0 尚志|初のベスト16越えへあと一歩に迫った駒澤大高。2年生守護神・鈴木がPK戦で胸に秘めていた想いとは――

2016年01月02日 橋本啓(サッカーダイジェスト)

阪南大高との開幕戦では、PKを止められず…

PK戦でGK鈴木は、尚志の1本目を好判断で阻止。このセーブで流れを呼び込み、チームの3回戦進出へ大きく貢献した。写真:石倉愛子

 1月2日、駒沢陸上競技場で行なわれた2回戦の第1試合・駒澤大高対尚志の一戦は、両者譲らずスコアレスのままPK戦へと突入した。すると、先攻の駒澤大高が3人とも成功したのに対し、尚志は3人全員が失敗。駒澤大高の3回戦進出が決まった瞬間、バックスタンドに大多数駆けつけた"地元"の応援団は大いに沸き返った。
 
「実は昨日のPK練習で選手たちが外しまくっていたんですよ。黙って見ていたんですけど、3人連続で外していたので、最後に集合した時に『お前ら全然成長してないな』って発破をかけたくらいでした。それで選手たちもこれじゃまずいと思って、スイッチが入ったのが良かったのかもしれません」
 
 試合後、駒澤大高の大野祥司監督は裏事情をこう明かした。練習ではまったく上手くいかなかったのに本番ではきっちり結果を残してくれたのだから、「選手たちはよく頑張ってくれました」(大野監督)と安堵の表情で称えていたのも頷ける。
 
 そのPK戦でスポットライトが当たったのが、2年生の守護神・鈴木怜だ。
 
 尚志の1本目を「左に蹴ると思っていた」(鈴木)との好判断で見事にセーブすると、相手の動揺を誘ったのか、後の2本はポストと枠外へ。冷静にキックを成功させた矢崎一輝、野本克啓、佐藤瑤大の貢献もさることながら、好守で流れを呼び込んだ鈴木の働きも大きかったのは間違いない。
 
 12月30日に行なわれた阪南大高との開幕戦でも鈴木はゴールマウスに立ったが、後半にPKを決められ「しっかり反応して手にも当てていただけに(止められずに)悔しかった」との想いを抱いていた。大野監督からは試合後、「5年前に出場した時の先輩は、試合中のPKを止めて新聞にも出たぞ」とあえて奮起を促されたそうだが、今回はGK冥利に尽きる見せ場で、開幕戦のリベンジを果たす形となった。
 
「絶対にシュートを止めたいと思っていたので、1本目をセーブできて良かった。でも、試合中はハイボールへの対応やキックフィードでまだまだ課題もある。自分自身のプレーには納得はいっていないです」
 
 PK戦での勝利に貢献しつつも、謙虚な姿勢を一切崩さなかったのは、ベンチに島﨑智成、江口達也の3年生GKが控えているからでもある。
 
「自分は2年生で試合に出ているので、先輩たちの分まで頑張らなきゃいけない。悔しい想いもあると思うんですけど、練習からしっかりサポートしてもらっていますし、本当に感謝しています」
 
 チームの勝利のため、そして、ベンチに控えるふたりの先輩GKのために――。初のベスト16越えが懸かる3回戦でも、鈴木はきっと頼もしい姿を見せてくれるはずだ。
 
取材・文:橋本 啓(サッカーダイジェスト編集部)
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