【高校選手権】聖和学園 7-1 野洲|負傷から復活したエースの谷田が前半に2ゴール。大量得点の口火を切る

2015年12月31日 小林健志

苦しみ抜いたエースに笑顔が戻った。

左足で先制点を突き刺した谷田(10番)は、前半の3ゴールすべてに絡み、試合の行方を決定付けた。 写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 ともにドリブルや個人技を武器とする聖和学園(宮城)と野洲(滋賀)の注目の一戦は、前半13分からの5分間で聖和学園のエースFW谷田光(3年)が3得点すべてに絡み、早々と試合の流れを決めた。
 
 13分のゴールは圧巻。左サイドでボールを持った谷田は緩急をつけたドリブルで相手DFを抜き去り、角度のない所から左足で突き刺した。さらに17分にはゴール正面で強烈なシュートを右足で放ち、こぼれ球に詰めたDF小池慶尚(3年)のゴールの起点となった。直後の18分にはMF高橋勇太(3年)のスルーパスを受けてドリブルで突進し、右足でゴール。15300人と超満員の観客は聖和学園のエースの個人技に酔いしれた。
 
 しかし、このピッチに立つまでの道のりは険しかった。6月の高校総体宮城県大会は胃腸炎のために決勝でベストパフォーマンスを出せずに優勝を逃した。7月までのプリンスリーグ東北ではゴールを量産していたが、8月上旬練習試合で左足中足骨を骨折。10月に復帰したものの、痛みが引かない状況で選手権の地区予選を迎えた。チームは見事2年連続3回目の出場権を獲得したが、谷田は決勝の後半から延長前半までの10数分の出場にとどまった。
 
 その後も痛みが引かず、直前の調整段階まで長時間の出場はできない状況だった。「今日の朝、最初から行くのか途中から行くのか自分で決めろと言いました。『最初から行けるところまで行きたいです』と言ってきたので先発を決めました」と加見成司監督が先発起用を決めたのは試合当日の朝だった。
 
「仲間のおかげで全国の舞台に来ることができました。この4か月間、親や監督や仲間に励まされ、助けられました」と周囲への感謝を語った谷田は立ち上がりから全力を出し切り、結果を残した。さすがに後半は「きつかったですね、長い時間出るのは久しぶりだったので」と語る通り、ペースダウンし後半31分に途中交代。まだ痛みも完全には引いていないというが「感覚が戻ってきた」と本人も振り返った通り、プリンスリーグ東北でゴールを量産していた時の凄みが戻ってきた。
 
 次の相手は強豪の青森山田(青森)。だが、「先制点が重要になります。あとは自分たちのサッカーをやれば勝てると思います」と強敵にも恐れる様子は無い。エースの復活で勢いに乗った聖和学園は、「昨年は尚志、今年は青森山田。東北を引っ張っているチームの壁を越えられないと、僕らもまだまだなので少しでも対抗したい」と加見監督が語る通り、東北を代表するチーム相手に個人技主体のサッカーでどこまで対抗できるか大いに注目だ。
 
 
取材・文:小林健志(フリーライター)
 
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