40歳で新境地を開拓し、リーグMVP。輝き続ける安藤梢に人々は何を思う? たくさんの「おめでとう」と「ありがとう」

2023年06月13日 西森彰

指揮官も全幅の信頼

今季のリーグMVPに輝いた安藤。写真提供:WEリーグ

 2022-23のWEリーグアウォーズの最後に、最優秀選手賞=MVPが発表された。プレゼンターで出席していた、元日本女子代表の澤穂希氏が読み上げる。

「三菱重工浦和レッズレディース、安藤梢選手です」

 40歳にして、本格的にセンターバックを始めた大ベテランが、昨季の山下杏也加に続き、WEリーグ2代目MVPに輝いた。

 安藤は「WEリーグができて『プロリーグで、浦和で優勝するんだ』というのが、自分の新たなチャレンジ、目標になりました。女子サッカーをプロ化してくれた、それに携わってくれた方々のお力に、感謝しています。40歳の私に新たな目標を与えてくれて、ありがとうございました。まだまだ証明していきたいと思います」と受賞の喜びを口にした。

 若い頃の安藤は、トップ下やフォワードといった攻撃的ポジションで鳴らし、なでしこリーグの得点王を取ったこともある。安藤が高校生の頃から、代表チームで一緒にプレーし、女子ワールドカップ・ドイツ大会でともに栄冠に輝いた澤氏は、「私の中での安藤選手はフォワード」と語る。
 
 しかし、代表チームでは、出場機会を与えられても、慣れないサイドのポジションが多かった。プレーの折り合いがつかず、本職のポジションで勝負できない時期は、悔しい思いをすることも少なくなかった。

 それでも澤氏が「(安藤から)姿勢、情熱、向上心を学んでいました」と評する真摯な取り組みで、雌伏の時期にポジション対応力を高めていく。これが、若い頃から取り組んできた理論的なトレーニングで鍛えられたフィジカルと相まって、長くトップレベルで戦える礎となった。

 浦和Lの楠瀬直木監督は、就任からの2年間、主力選手の離脱など、一番計算の狂ったポジション、一歩間違えばチームが崩壊する危機には決まって、安藤を送り込んだ。経験に裏打ちされたプレーでタスクを消化し、必ず要求以上の結果を出すベテランに、全幅の信頼を置いていた。今季の戦場は、センターバックになった。

 ゴールキーパーの福田史織も、相方のセンターバック石川璃音も、昨季は控え組だった選手たちだ。トレーニングからしっかりと話し合う安藤と、一回り以上、下の若手たちの姿は、キャプテンの柴田華絵や清家貴子ら中盤より前の選手からも、印象的なシーンとしてあがっていた。安藤とともにベストイレブンに選ばれた石川は「安藤さんの経験がほとんどです」と、その支援に感謝する。
 

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