移籍専門記者による強化部門解説|アトレティコ・マドリー編「幅広いネットワークを持っているうえに意思決定までが素早い」

2015年12月30日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

カミネロが国内、ベルタが国外を主に担当する。

現役時代はアトレティコでリーグ優勝も経験した元スペイン代表MFのカミネロ(右端)。2011年夏に古巣のフロント入りし、SDとして強化を仕切る。(C)Getty Images

 クラブの財政上の要請もあり、毎年のようにレギュラークラス数人を入れ替えるオペレーションを続けながら、チャンピオンズ・リーグでベスト8を狙える高い競争力を保てているのは、高評価に値する。
 
 強化部門の責任者は、スポーツディレクターのホセ・ルイス・カミネロ。補強戦略を練り、最終的な決断を下す。
 
 ただ、そこまでのプロセスにおいてきわめて重要な役割を果たしている右腕がイタリア人のテクニカルディレクター、アンドレア・ベルタだ。
 
 カミネロがスペイン国内のディールを中心に担うのに対して、ベルタは他のヨーロッパ諸国や南米の代理人に太いパイプを持っており、移籍交渉の多くを直接担当。2015年夏にコロンビアまで足を運んでミランと交渉していたジャクソン・マルティネスを説得し、獲得にこぎつけたのも彼だった。
 
 このベルタはイタリアのアマチュアクラブからの叩き上げで、パルマ、ジェノアを経て2013年から現在の地位にある。
 
 カミネロとベルタのコンビは、幅広いネットワークを持っているうえに意思決定までが素早く、一旦交渉を始めると短期間で話をまとめ上げるスピード感を持っている。これは刻一刻と状況が変化するメルカートにおいては大きなアドバンテージだ。
 
 そのネットワークにひと役買っているのがポルトガル人の大物代理人、ジョルジュ・メンデス。メンデスはベルタと密接な関係にあり、フェルナンド・トーレスやヤニック・カラスコの獲得にも関与している。
 
 アトレティコは資金不足もあって、補強にあたってはしばしば投資ファンドの『ドイエン・スポーツ』から資金の供給を受けているが、同社のネリオ・ルーカス会長との関係は、メンデスとのそれほど緊密ではない。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2015.11.19号より加筆・修正
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。父は70~90年代にナポリ、ジェノア、レッチェなどで監督を歴任し、現在はTVコメンテーターのジャンニ・ディ・マルツィオ。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。父を通して得た人脈を活かしてカルチョの世界に広いネットワークを築き、移籍マーケットの専門記者という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。発信するニュースはすべて彼自身のプライドがかかったガチネタであり、ハズレはほぼ皆無と言っても過言ではない。
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事