【バイエルン番記者】前半戦のMVPは「マイスター」の称号を得たボアテングだ!!

2015年12月23日 パトリック・シュトラッサー

「すべてを持ち合わせた世界最高のセンターバックだ」

一流のCBへと飛躍を遂げたボアテング。首脳陣の評価は高く、12月18日には21年までの契約延長にサインした。(C)Getty Images

 ブンデスリーガ17節のハノーファー戦に1-0で勝利し、前半戦を首位で折り返したバイエルン。ここまでわずか1敗と抜群の安定感を誇り、2位ドルトムントに勝点8差をつけてトップを快走している。

 前半戦のMVPを挙げるなら誰か。6節のヴォルフスブルク戦で1試合5ゴールの離れ業をやってのけたロベルト・レバンドフスキ、類稀な決定力を発揮したトーマス・ミュラー、新加入ながら崩しの切り札として輝きを放ったドグラス・コスタ、いまや名実ともに世界最高のGKに登り詰めたマヌエル・ノイアー……。候補者を挙げれば、枚挙にいとまがない。

 しかし、私が考えるMVPは別にいる。最終ラインの要として堅守を支えたCBジェローム・ボアテングだ。いわばヘルプトマイスター(秋の王者)の"セキュリティー部門の責任者"たる27歳は、この1年で劇的な成長を遂げた。プレーの面だけでなく、ひとりの人間として成熟し、同僚、監督、クラブの首脳陣、そしてメディアからのリスペクトを勝ち取った。ジョゼップ・グアルディオラ監督はボアテングをこう称賛している。

「ジェロームは驚異的だ。すべてを持ち合わせた世界最高のセンターバックで、人間的にも素晴らしい」

 規格外の身体能力を誇り、1対1の対応ではほぼ負け知らず。とりわけここ最近で磨きがかかったのが、前線へのフィードだ。左右両足で鋭い楔のパスを供給し、局面を一気に前へ進める。

 ハイライトは5-1で大勝した8節のドルトムント戦だ。最終ラインからの正確なロングパスで先制点と3点目をアシスト。この活躍ぶりを受けて、同僚のミュラーはフランツ・ベッケンバウアーになぞらえて「カイザー(皇帝)」と評した。
 
 守備者として大きな成長を遂げた要因はどこにあったのか。ボアテングはグアルディオラ監督との出会いが大きかったと振り返る。
 
「ペップ(グアルディオラ監督の愛称)は何度も僕に『勇気を持て』と声をかけてくれた。彼は選手に何か新しいことを教えたり、チャレンジさせたりすることに関しては、達人なんだ」
 
 感情を抑えきれずに不要なカードを頂戴したり、失点に直結するミスを犯していたのは、すでに過去の話だ。12-13シーズンにユップ・ハインケス監督の下で3冠を達成し、14年のブラジルW杯では世界王者の一員となった。そうした積み重ねた成功体験の一つひとつがボアテングの糧となったのは間違いない。
 
「マイスター」の称号を得たボアテングは先日、バイエルンとの契約を21年まで延長し、チーム最高クラスの高給取りとなった。後半戦では、この頼もしきCBと守護神ノイアー、攻撃陣ではD・コスタとミュラーの働きが鍵を握るだろう。前半戦は失望を残したフランク・リベリ、アリエン・ロッベン、メディ・ベナティア、ファン・ベルナトらの奮起にも期待したい。
 
文:パトリック・シュトラッサー(アーベントツァイトゥング紙)
翻訳:円賀貴子
 
【著者プロフィール】
Patrick STRASSER(パトリック・シュトラッサー)/1975年ミュンヘン生まれ。10歳の時からバイエルンのホームゲームに通っていた筋金入りで、1998年に『アーベントツァイトゥング』紙の記者になり、2003年からバイエルンの番記者を務める。2010年に上梓した『ヘーネス、ここにあり!』、2012年の『まるで違う人間のように』(シャルケの元マネジャー、ルディ・アッサウアーの自伝)がともにベストセラーに。
 
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