【クラブW杯】黒子に徹したバルサの象徴。イニエスタの存在がMSNを輝かせた

2015年12月21日 石坂洋輔(ワールドサッカーダイジェスト編集部)

4年ぶりのチャンピオンの座も、単なる通過点に過ぎない。

圧巻のパフォーマンスを見せたMSNを縁の下で支えたのはこの男だった。 (C)SOCCER DIGEST

 鋭いドリブルやスルーパスで再三に渡ってチャンスを演出するなど、広州恒大との準決勝で出色の活躍を見せたアンドレス・イニエスタ。リオネル・メッシとネイマールというふたりのクラックが復帰したリーベルとの決勝で放ったインパクトは、準決勝のそれと比べるとかなり薄かった。
 
 セミファイナルとポジションこそ同じ左インサイドハーフだが、自ら仕掛ける回数は明らかに減少。メッシとネイマールのカムバックで、攻撃よりも守備のバランスを意識していた。
 
 それでも、最初の決定機を作り出したのは、この31歳のベテランMFだった。11分、中盤でこぼれ球を拾うと、素早く前線にスルーパスを供給。相手GKマルセロ・バロベロを強襲するメッシのシュートを演出した。
 
 決定機に直接関与したのはそれくらいで、11分以降で目立ったのは組み立ての局面における働きと守備での貢献だ。抜群のボールキープで相手をいなし、味方との正確なパス交換でチームアタックを促進した。さらに、素早いチェックでカウンターを阻止すれば、チームメイトとともに敵を囲ってボールを奪取。そこからカウンターに繋がる縦パスを何本も送った。
 
 メッシ、ネイマール、ルイス・スアレスの強力3トップが輝いた陰で奮闘した。つまりは、この"黒子役"がいたからこそ、"MSN"が圧巻のパフォーマンスを披露できたということだ。
 
 とはいえ、バルサの象徴とも言えるキャプテンは、このタイトル獲得にも満足はしていない。「個人、チームともにクラブワールドカップでタイトルを獲れて非常に嬉しい」と語った後、さらに続けた。
 
「バルサは物事の進め方にすごく特長があるクラブだ。常に同じ考え、アイデアを持ち続けて戦っている。ひとつのアイデアを持ち続けるということは、すごく重要なことだと僕は思う。去年から6つのうち5つのタイトルを獲れたが、リーガも再開し、また普段通りの生活に戻る。この先、また3つのタイトルをかけた戦いが始まるので、そこで引き続き結果を出せなければ、良いシーズンとは言えない」
 
 4年ぶりに勝ち取ったクラブワールドカップ・チャンピオンの座も、単なる通過点に過ぎない。バルサ・スピリットの伝承者は、常に次のタイトルを見つめている。

取材・文:石坂洋輔(ワールドサッカーダイジェスト編集部)
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