【クラブW杯】MSNが崩壊しても、バルサにはイニエスタがいる

2015年12月18日 竹田 忍(ワールドサッカーダイジェスト編集部)

広州恒大の淡い期待を打ち砕いた偉大なるキャプテンの右足。

繊細なパスでチャンスを創出したこのイニエスタを、ルイス・エンリケ監督も手放しで称賛した。 写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 バルセロナと広州恒大の間に決定的な差を生み出していたもの――。それが、イニエスタだった。
 
 左内転筋の回復が遅れているネイマールに続き、メッシも尿管結石で欠場。バルサ自慢の3トップ、MSNはあえなく崩壊した。

 それでも残されたエース、スアレスがスアレスでありつづけ、前線でいつもと変わらぬ存在感を放ちつづけられたのは、ミッドフィールドで王様のごとく振る舞うこの小柄なテクニシャンがいたからだった。
 
 ボールを足もとに収めると、小躍りするかのように軽やかなステップを刻み、ドリブルやワンツーなどのコンビネーションを駆使して密集地帯を攻略にかかる。
 
 巧みなキープで十分に相手DFを引き付けてから丁寧に送り届けたラキティッチへのマイナス気味の横パス、そして、最終ラインの裏に走り込むスアレスの足もとにピタリと落ちる浮き球の縦パス。

 ふたりのクラックを欠き、圧倒的に押し込みながらもゴールが割れないもどかしい展開に終止符を打ったのも、決勝進出へ向けて淡い期待を抱く広州恒大のサポーターを完全に黙らせたのも、イニエスタの右足だった。
 
 攻撃にスイッチを入れる。その役割をクラブワールドカップ準決勝という大舞台で、見事なまでに実践してみせたイニエスタ。「仕掛けるのがうまく、まさしく万能なプレーヤー」。ルイス・エンリケ監督も試合後、偉大なるキャプテンを手放しで称賛した。
 
 そもそもこの日、バルサが縦に早い得意の展開をあきらめ、中盤でポゼッションを高めるスタイルに徹することができたのも、イニエスタが健在だったからこそ。

 メッシ、ネイマールがいなくてもバルサにはイニエスタがいる。決勝も同様の状況になる可能性は大いにあるが、次戦でもまた、カンテラが生んだこの天才MFがチームを救ってくれるはずだ。

【PHOTOハイライト】バルセロナ 3-0 広州恒大

取材・文:竹田 忍(ワールドサッカーダイジェスト編集部)
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