「メッシがメッシでいられるのはバルサしかない」スペイン紙記者がエースの帰還がもたらす“相乗効果”を力説!「パリSGファンのブーイングは愚行」【現地発】

2023年05月08日 エル・パイス紙

メッシの復帰が新たなサイクル構築の起爆剤になる

今夏の退団が確実視されているメッシ。(C)Getty Images

 リオネル・メッシは扉を開けたままバルセロナを退団した。したがって復帰が実現すれば、自らの台頭を境に始まったサイクルを完結させることができるが、ベテランの年齢を迎えた今も、その実力に陰りは見られない。

 徐々に第一線から退いているとはいえ、昨年12月にはW杯を制覇した。私がメッシの復帰が新たなサイクル構築の起爆剤になると考える所以でもある。

 私のようにハッピーエンドが好きな人間は、きっとメッシが再びバルサと手を取り合う姿を見たいはずだ。すなわち我々が慣れ親しんできたユニホームを身にまとい、慣れ親しできたエンブレムに忠誠心を示し、慣れ親しんできたスタジアムでプレーし、慣れ親しんできたライバルたちと対峙するメッシである。

 もちろん今のメッシはあの頃の彼ではない。長年に渡って、神と呼び続けると、その人間が年を取らないと錯覚してしまう危険性をはらんでいるが、決してそうではない。パリ・サンジェルマンの一部のファンは、25歳のメッシを見ることを期待していたのだろう。だから本拠地パルク・デ・フランスでブーイングを浴びせるという愚行に出てしまう。

 メッシは全盛期のフィジカル、閃き、加速力を失った。にもかかわらず、先のニース戦でMVP級の働きを見せた。そのプレーには低身長で筋肉質の彼が、10年以上にわたって地球上で最高のフットボーラーとして君臨し続けることができた神髄が凝縮されていた。

 理由は単純明快、キリアン・エムバペがハットトリックを達成したにもかかわらず、メッシが勝者となったカタールW杯決勝戦と同じことだ。それは、フットボールの肉体的な法則から外れ、無形のものが支配する暗闇に足を踏み入れることとも関係がある。
 
 メッシはピッチ上ではメッシのままであり、相手選手を翻弄し、チームメイトの寵愛を受け、そして何よりも自らが掌握するゾーンでフットボールを生み出し続けている。スピードが低下した分、考えることが増え、チームメイトが彼の分も走ることで、誰も真似できないようなところにボールを届け、時に自らシュートを放ち、ゴールを決める。

 メッシがバルサに復帰しなければならならないのは、歴史的な理由だけではない。バルサがピッチ内外においてどこを目指すべきという将来を展望するうえで必要不可欠なピースだからである。

 現在のバルサに誰よりも興奮と感動をもたらすことができる選手がメッシだ。その逆もまた然りで、メッシがその芸当ができるのは、パリSGでもその他のクラブでもない。バルサだけである。メッシが我々がイメージするメッシでいられるのは、バルサ以外にないのだ。

文●マヌエル・ハボイス(エル・パイス紙)
翻訳●下村正幸

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙のコラム・記事・インタビューを翻訳配信しています。


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