【クラブW杯|取材記者の視点】前半のチャンスを仕留めていれば……。広島は世界との差に屈した

2015年12月16日 小田智史(サッカーダイジェスト)

決定力不足、そして球際、スピード。ディテールの違いが明暗を分ける。

3つの決定機だけでなく、あと1本のパス、クロスがつながっていれば……、というシーンも多かった。54分に右サイドを突破したドウグラスからのクロスも大きく精度を欠いてしまった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

「失点するまでは思い描いていたプラン通りだった」
 
 試合後の森保監督の言葉が表わすように、70分過ぎまでは広島のゲーム展開だった。いや、むしろ予想以上にチャンスは多かったと言ってもいいだろう。

【PHOTOハイライト】広島 0-1 リーベル

 リーベルは試合開始と同時に前線からハイプレスを仕掛け、攻撃ではピッチを広く使いながら、ショートパス、ロングボール、サイド攻撃、カウンターと多彩なアタックでゴールに襲い掛かってきた。しかし、広島は序盤から押し込まれることはある程度見越して5バックを敷き、3バックが2トップ、ウイングバックが両SBをケア。持ち前の粘り強い守備で撥ね返し、徐々にポゼッションを取り戻していく。
 
 攻撃では、「裏」がひとつのポイントだった。26分、塩谷のロングボールに抜け出した皆川がGKと1対1の局面を迎え、30分にはカウンターからサイドを経由してゴール前、40分にはこぼれ球を拾った青山から皆川に鋭いくさびが入り、前半だけで3度の決定機が訪れた。しかし、いずれも相手GKの好セーブに遭い、絶好のチャンスを逃してしまう。おそらく、いずれかひとつでも決まっていれば、ゲーム展開は違うものになっていただろう。
 
 逆にリーベルは後半、L・ゴンサレス、スーパーサブのビウレス・タバレと攻撃的なカードを立て続けに切り、圧力を高めていく。広島からすれば、流れのなかで崩されることはなかったが、押し込まれてはファウルを犯し、カウンターに転じようにも引っ掛けられて再び守備に回る展開。その積み重ねが、72分のセットプレーからの失点につながってしまった(GK林は「自分が簡単にクリアしていればなんの問題もなかった」と振り返っている)。
 
 リードを奪った後のリーベルは、ファウルを誘ったり、ボールをキープしたり、交代で時間を使ったり、さすがのゲームマネジメントを見せた。試合を通しての決定機は広島4、リーベル2。「チャンスはウチのほうが多かった」(佐藤)なかで、決めるか、決めないか。その差が勝敗を分けた。
 
 要するに広島は、典型的な「決定力の欠如」によって敗れたわけだが、森保監督や選手たちは、「球際の強さ」や「切り替えのスピード」といったディテールにもこれまでのチームとの違いを感じたという。
 
 しかし、広島の戦いはこれで終わりではない。「世界」を体感した今日の経験を、3位決定戦にどうつなげるか。最後まで、Jリーグ王者らしい戦いに期待したい。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
 
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