【クラブW杯】広州恒大をベスト4に導いた“フェリポン・マジック”

2015年12月13日 小田智史(サッカーダイジェスト)

中国人選手たちに、闘う姿勢や“勝者のメンタリティ”をすり込めたことが大きかった。

ワールドカップ優勝経験を持つスコラーリ監督(中央)は、巧みな選手交代で勝利を手繰り寄せた。 写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 "フェリポン"ことルイス・フェリペ・スコラーリ監督に率いられた広州恒大が、アジア王者の意地を見せた。北中米カリブ海王者のクラブ・アメリカに先制を許し、その後も猛攻に晒されながら、粘り強くゲームをマネジメント。交代出場のふたり(ガオ・リン、チェン・ロン)が絡んで80分に同点とすると、終了間際の90+3分にパウリーニョの劇的決勝弾で準決勝に駒を進めた。

【PHOTOハイライト】クラブ・アメリカ 1-2 広州恒大

 交代の札が機能して同点弾を奪い、自身の監督就任時に獲得したパウリーニョが決勝弾を決めたのだから、スコラーリ監督とすればしてやったりだろう。
 
「後半最初の15分間はひどかった」というなか、1点のビハインドを背負った指揮官は勝負に出た。後半開始から投入していたチェン・ロンに続き、66分にFWガオ・リン、78分にはFWユー・ハンチャオを投入。中盤を空けるリスクを冒してFWの枚数を増やし、攻撃の圧力を高めたのだ。交代後に波状攻撃を仕掛け、4回の決定機を作っているが、スコラーリ監督は自身の采配についてこう振り返る。
 
「90分間の一発勝負だと思って戦った。0-1で負けていれば賭けに出るしかない。FWを4、5人にして、前に出た。私はチームのことを良く理解しているし、ベンチの選手もいろんなシチュエーションを分かっている。選手交代でチームの士気が高まった」
 
 試合は「リーグ、ACLで最も重要な選手だった」と称賛するパウリーニョのヘッドで決まったが、スコラーリ監督はなによりも、チームの中国人選手たちに闘う姿勢や"勝者のメンタリティ"をすり込めたことが大きいと語る。
 
「他の文化を持つ選手、例えば中国人選手に理解してもらうことができて嬉しかった。勝てた瞬間に、そんな感情が湧き起こった。クラブ・アメリカはメキシコで歴史のあるチームだが、そんな強敵でも勝てるんだと、選手たちが示してくれた」
 
 自身もテクニカルエリアの最前線で細かいポジショニングの指示を出し、時にクラブ・アメリカの選手とサイドラインを挟んで激しく言い合う場面もあったほど、勝利にこだわった。
 
 準決勝ではヨーロッパ王者のバルセロナと対戦する。相手は世界を代表するビッグクラブだが、ワールドカップを制した経験もあるスコラーリ監督は、勝利を信じてやまない。
 
「バルセロナと戦えることは非常にスペクタクル。我々はバルサに比べれば小さなチームだが、なにかやってみせたい。選手たちには勝てると信じてほしい。この先は、今日やったように夢を追いかけるしかない」
 
 最後に指揮官はこう意気込みを語って会見を終えた。

「私はリッピ監督と同じ順位(2013年の4位)に並んだ。でも、これで終わるつもりはない」
 
 バルセロナとの対戦の地は、2002年のワールドカップで世界一の座を掴んだ思い出の横浜だ。"フェリポン"は果たして、どんな"マジック"を見せるのだろうか。
 
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
 
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